カレントテラピー 33-10 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.10 11変貌するパーキンソン病の概念955るうえでも重視されている.2015年7月現在,診断基準は発表されていないが,MDSにおいて,prodromalPDから最終的に運動症状を発現し,診断基準を満たすPDに移行する確率を考慮しつつ,臨床的には運動と非運動の指標を取り入れ,バイオマーカーを組み込んだ診断基準の作成が試みられている1).Ⅳ αシヌクレインを欠くPDという概念1912年にLewy小体の記載がなされ,1919年にはTretiakoffにより黒質におけるLewy小体の発見があり,さらに1997年にLewy小体の主要構成成分がαシヌクレインであることが見出されて以来,黒質神経細胞脱落とαシヌクレインの沈着がPDの病理診断の中核となってきた.しかし,LRRK2変異例では,臨床診断基準はPDを満たしながら,αシヌクレイン病理を欠き,タウ病理のみを呈する場合のあることが明らかになっている14).また,PARK 2は,同じく臨床診断基準はPDを満たしながらαシヌクレイン病理は認めないことが知られている.こうした黒質緻密層の神経細胞脱落を認めながらαシヌクレインの沈着を認めない症例もPDと呼ぶべきかどうかという議論がある.一方で,LRRK2変異例やPARK2症例においてもαシヌクレイン病理を合併する症例もあり,話を複雑にしている.MDS Task Forceは,遺伝子診断に基づく診断カテゴリーを孤発性のαシヌクレイノパチーの診断カテゴリーとは別につくる必要性を述べている1).この中では,原因遺伝子とリスク遺伝子は区別し,現在ある家族性PDのPARK分類を見直すことにも触れている.一方で,家族歴のある例を除外する従来の診断基準についても見直しが必要と言及している.また,症状の改善を目的としたドパミン系に作用する薬剤の治験であれば遺伝性PDを入れてもよいが,神経保護を目的とした治験であれば,薬剤の作用機序に応じて入れ込むか除外するかを判断すべきとも指摘しており,重要かつ現実的な考えと思われる.Ⅴ PDは全身病とする概念従来,PDにおける自律神経不全は進行例で認めるとされてきたが,近年の研究は,先に触れたように運動症状出現前からさまざまな自律神経症状を認めることを明らかにしてきた.Boeveらは,PDでは自律神経不全→嗅覚低下→RBD→パーキンソニズム→認知機能低下→精神症状の順で発症するという一つの概念を示している15).Health Improvement Network UK primary caredatabaseを用いて8,166名のPDと46,755名の健常者を対象とした研究では,PDは健常者に比して発症5年前の時点で起立性低血圧を3.23倍,便秘を2.24倍,排尿障害を1.96倍,陰萎を1.3倍多く認めていた5).RBDは高頻度にαシヌクレイノパチーに移行することが明らかとなっており,その50%が10年以内にパーキンソン症状を発症するとされているが16),パーキンソン症状発症15年前から便秘,13年前から排尿障害,10年前から軽度の起立性低血圧が出現し得るとの研究結果が出ている6).123 I -metaiodobenzylguanidine(MIBG)心筋シンチグラフィは,RBDにおいて高率に異常を認め,一部のRBD症例ではドパミントランスポーターイメージングで異常を認める前から集積低下の出現が報告されている.PDにおいて自律神経不全は多系統萎縮症に比べて,特に病初期には軽度の場合が多く,従来の診断基準では早期に重度の自律神経不全を認めることは除外項目であったが,PDでも病初期から高度の起立性低血圧を認める一群(AFPD)が古くから報告されている.これは前述のLewy小体型認知症(dementiawith Lewy bodies:DLB)とPDが認知症の程度や出現時期という側面から見た連続したスペクトラムととらえられるように,AFPDとPDも自律神経不全の程度や出現時期から見た連続したスペクトラムであると考えることができる.病理学的には,PDのみならずincidental Lewybody disease(ILBD)においても,消化管のマイスネル神経叢やアウエルバッハ神経叢,心臓神経叢,副腎髄質,骨盤神経叢,皮膚など末梢においても広