カレントテラピー 33-10 サンプル

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12 Current Therapy 2015 Vol.33 No.10956範にαシヌクレイン病理を認めることが明らかとなっている.また脊髄や神経根にも同様にαシヌクレイン病理を認める10).PDでは,自律神経系以外にも,感覚の閾値や運動と感覚の統合の障害をはじめ,触覚,痛覚,温度覚,固有感覚を含めた広範な体性感覚障害を認めることが明らかになってきており,感覚情報の時間的空間的処理の異常が,自発的な運動の開始準備や施行に影響を及ぼす可能性も示されている17).こうした感覚障害については,基底核?視床?大脳皮質における処理過程の障害や,末梢の痛み感覚器,中脳水道周囲灰白質,さらには非ドパミン系の神経伝達システムの異常が係わっている可能性も明らかになってきている.このように,運動系以外にも自律神経系,さらには感覚系にも広範な異常を認め,病理学的にも中枢から末梢まで広範なαシヌクレインの沈着を認める,経過中に多彩な臨床像を呈する(図3)という事実は,PDは全身病であるという概念を強くサポートしている.Ⅵ PDの臨床病型の概念(図4)従来,PDは振戦優位型,無動固縮優位型に分類されてきた.ここに歩行障害や姿勢反射障害の優位な病型を入れる場合もある.さらに発症年齢や進行速度に着目した臨床病型分類も報告されている.実際には非運動症状という観点も含めると,PDは非常に多彩な臨床病型,予後を呈する.また臨床病型分類は,予後や治療に大きな違いを反映するべきだが,実際には,どの臨床病型がこうした基準を満たすのかは明らかではなかった.最近,Postumaらのグループは,前方向的な観察研究を行い,軽度認知機能障害,起立性低血圧,RBDが疾患の進行に影響していることを示した18).また,認知症へ移行する危険因子として同様に軽度認知機能障害,起立性低血圧,RBDに加え,色の識別能,すくみ足が関連していることを報告している19).今後,疾患の進行を反映する臨床病型を考えていくうえで,運動系のみならず,非運動系も考慮すべきことを示している.Ⅶ おわりに本項では紙面の都合上,変貌するPDの概念について,古典的なPD,Premotor PD,αシヌクレインを欠くPD,全身病としてのPD,PDの臨床病型について触れた.現在MDSのTask forceが非運動症状,Premotorの概念を入れながら診断基準の再考をしているように,少なくともPDを全身病としてとらえる概念は,現在の大きな流れである.早期PDは非運動症状の組み合わせのみでも高い診断を得ることができるとする報告もある20).これにMIBG心筋シンチグラフィ,FP -CIT SPECT,黒質超音波画像を加えることで,超早期診断に近づくことが期待され,さらに振戦優位型無動固縮優位型vs.運動症状からみた分類(1)など若年発症型高齢発症型vs.など発症年齢からみた分類急速進行型緩徐進行型vs.運動症状からみた分類(2)など悪性広範型MCIRBDOH運動主体/緩徐進行型vs.など重症度からみた分類図4多彩なパーキンソン病の臨床病型MCI:軽度認知機能障害,RBD:レム睡眠行動異常症,OH:起立性低血圧