カレントテラピー 33-11 サンプル

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42 Current Therapy 2015 Vol.33 No.111092への照射を避けることができず,直腸出血をきたすため,65~70Gyの照射が限界であった4).このため,高リスク群では,放射線治療よりも手術が選択されることが多かったが,IMRTの登場により,前立腺癌の治療は大きく変わった.図2に示したように,IMRTを用いると,直腸線量を抑え,かつ前立腺へ76~80Gyレベルまでの線量増加が可能である.これにより,直腸出血の発生を抑えつつ,治療成績を向上させることが可能となった5).現在,本邦におけるIMRT症例の大半は前立腺癌が占めている.Ⅳ 画像誘導放射線治療(imageguidedradiation therapy:IGRT)IGRTとは,治療装置ないし治療室内に付設された画像撮影装置を用いて放射線治療時の位置決め精度を高める技術をいう.安全に放射線治療を行うためには,腫瘍の体内移動の影響(internal margin:IM)や毎回の照射における設定誤差(set-up margin:SM)を含めた標的体積を設定することが必要である.IGRTの目的はこれらのマージンを安全に縮小することである.腫瘍の体内移動で最も大きな誤差要因となるものが呼吸性移動である.従来は,この呼吸性移動はX線透視画像にて確認していたが,最近では時間的要素を加味した四次元CT(4DCT)を使用して,呼吸位相ごとの腫瘍の動きを正確に把握できるようになった.また,この4DCT画像と呼吸をモニタするシステムを用いることで四次元放射線治療が可能となり,ある呼吸位相に腫瘍が存在する間のみ放射線を照射する迎撃照射や治療ビーム自体を移動させ,腫瘍を追いかけながら照射をする追尾照射が可能となり,すでに臨床使用されている.最新の放射線治療システムでは,毎回の照射直前に患者体位のSMを測定し,解剖学的位置ずれを補正した後に治療を行うことが可能となっている.患者体位の位置誤差を測定するための画像取得には,放射線治療器自体から照射されるMV -X線や,最新の放射線治療器に装備される,または治療室に設置されたkV -X線が用いられる.また,体内の腫瘍や解剖学的構造を三次元的に測定可能なコーンビームCTを装備した放射線治療器も登場した.このような技術を用いてIMやSMを縮小することにより,周囲正常臓器への照射線量を減らし,さらに標的腫瘍への線量増加が可能となり,治療成績向上あるいは有害反応の減少が期待できる.Ⅴ おわりに正常臓器を守りつつ,いかに癌を根治させるかという課題は放射線治療において根源的なテーマである.高精度放射線治療の実現は,このテーマをひたすらに探求することにより成し遂げられた大きな成果のひとつである.本稿で述べた高精度放射線治療の登場により,前立腺癌や原発性肺癌などは,その治療方針が大きく変わった.また陽子線や炭素線を用いた粒子線治療装置も確実に存在感を示しつつある.分子イメージングの進歩や分子標的薬の台頭などがん治療を取り巻く環境が変わりつつあるなか,これら技術や生物学との融合など更なる高精度放射線治療の発展と臨床応用成果が期待される.参考文献1)Nagata Y, Okajima K, Murata R, et al:Development of anintegrated radiotherapy network system. Int J Radiat OncolBiol Phys 34:1105-1111, 19962)Nagata Y, Hiraoka M, Shibata T, et al:A prospective trial ofstereotactic body radiation therapy for both operable &inoperable T1N0M0 non-small cell lung cancer:Japan ClinicalOncology Group Study - JCOG0403. Int J Radiat OncolBiol Phys. in press3)Nutting CM, Morden JP, Harrington KJ, et al;PARSPORTtrial management group:Parotid-sparing intensity modulatedversus conventional radiotherapy in head and neckcancer(PARSPORT):a phase 3 multicentre randomisedcontrolled trial. Lancet Oncol 12:127-136, 20114)Pollack A, Zagars GK, Starkschall G, et al:Prostate cancerradiation dose response:results of the M. D. Anderson phaseIII randomized trial. Int J Radiat Oncol Biol Phys 53:1097-1105, 20025)Cahlon O, Zelefsky MJ, Shippy A, et al:Ultra-high dose(86.4Gy)IMRT for localized prostate cancer:toxicity and biochemicaloutcomes. Int J Radiat Oncol Biol Phys 71:330-337, 20086)大西 洋, 唐沢久美子, 唐沢克之ほか:がん・放射線療法 2010.篠原出版新社, 東京, 2010