カレントテラピー 33-11 サンプル

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66 Current Therapy 2015 Vol.33 No.111116Ⅰ 背景近年でここまでがん免疫療法への関心が高まったことはなく,筆者の体験では今までこの分野に比較的無関心であった医師の間でもがん免疫療法に関する期待と猜疑心が入り交じった意見が交換されるようになった.このがん免疫療法のブームの立役者は,免疫チェックポイント阻害剤とキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(CAR -T)療法であり,特に免疫チェックポイント阻害剤のひとつである抗PD - 1抗体療法や抗PD -L1抗体療法が今日のがん免疫療法の代表と考えられる.これまでがんに対する免疫療法は,免疫担当細胞の活性化を目的としたものや,免疫担当細胞にがんの情報を与えることを目的としたものが大半であった.このがんの情報を免疫系に教育し活性化させることは大変重要であることに変わりはないが,免疫系の安全システムとして活性化した免疫系にブレーキをかける自動システムが存在する.これには制御性T細胞(regulatory T cell:Treg),腫瘍関連マクロファージ(tumor-associated macrophage:TAM),免疫チェックポイント阻害剤について吉村 清*1・玉田耕治*2*1 国立がん研究センター先端医療開発センター免疫療法開発分野分野長*2 山口大学大学院医学系研究科免疫学教授がん診断と治療の最近の動向─ 個別化医療の発展“Checkpoint Blockade”という言葉が学会や研究会などで頻繁に飛び交っている.かつてこの言葉はがん細胞においてその細胞周期をコントロールする際に用いられてきたが,現在は免疫チェックポイント阻害剤を用いた免疫系の抑制の解除にほぼ用いられている.もちろん言葉の定義が変わったわけではない.使用頻度が変わったためである.がん免疫療法は,手術,化学療法,放射線療法に次ぐ,第4の柱としてその理論的根拠を含め強く期待されながら長らくその期待どおりの結果を出すことができなかった.その理論的根拠とは免疫担当細胞ががんを学習し記憶することで体内のがんを攻撃し,長期間その再発を防ぐ可能性があると考えられている.一方で,期待に沿えた成果を出せなかった理由としてがんに対する殺細胞効果を抑制しようとするシグナルが治療効果の妨げとなっていることが近年明らかになってきた.現在,T細胞への抑制を解除する目的で免疫チェックポイント阻害剤を用いる治療法が注目されている.このためがん免疫療法は,現在かつてない期待が寄せられている.本稿で取り上げる免疫チェックポイント阻害剤はT細胞の殺細胞効果への抑制を解除する目的で用いられる治療法として開発され,その有効性からついに免疫療法ががん治療の柱のひとつになる時代が来たと言われ始めた.現在日本ではニボルマブが根治切除不能な悪性黒色腫に対して2014年製造販売承認され,次は肺がんでの承認の可能性が高くなっている.この免疫チェックポイント阻害剤に関して現時点での主力である抗PD-1/PD-L1抗体療法を中心に取り上げた.a b s t r a c t