カレントテラピー 33-11 サンプル

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8 Current Therapy 2015 Vol.33 No.111058Ⅰ はじめに科学技術の進歩や長年の研究成果により,さまざまな疾患に対する治療法が開発されてきた.特に,各種がんに対する治療は外科的な治療をはじめ,化学療法など多くの治療選択が可能であるが,治療効果を最大に得られるのは早期がんであることは間違いないだろう.つまり,がん根治に向けた重要な課題のひとつに早期発見,早期治療が挙げられる.さらに多様化する治療法に対して,患者一人ひとりに最良の治療法選択を行えるコンパニオン診断や治療効果をモニタリングできるシステムがあることが望ましい.このような期待に応える新しい診断法として,体液中に存在するmicroRNA(miRNA)を検出する体液診断が注目されている.私たちの体重のおよそ60%は水分であり,その1/ 3は細胞外に体液として存在し,古くから,体液にはさまざまな物質を運ぶ重要な役割があることが知られている.運ばれる物質には生命活動に必須である多くの栄養素をはじめ,疾患に関与する物質も含まれている.疾患,特にがん細胞や,その周囲の細胞が分泌し,体液中を循環している物質を腫瘍マーカーとして,半世紀ほど前から利用している.1960年代にはcarcinoembryonicantigen(CEA)やalpha-fetoprotein(AFP)などが発見され1)~5),その後,モノクローナル抗体の作成技術などによって,腫瘍マーカーの開発は加速し,現在では保険適用となっているものだけでも約40種類の腫瘍マーカーがある.しかし,これら腫瘍マーカーのほとんどは早期診断に用いることが難しいとされている.現在,これらタンパク質とは別に体液中に存在するmiRNAで早期診断を行う研究が世界的に行われており,本稿では,その有用性,将来性,そして問題点について概説する.*1 国立がん研究センター研究所分子細胞治療研究分野研究員*2 国立がん研究センター研究所分子細胞治療研究分野主任分野長がん診断と治療の最近の動向─ 個別化医療の発展血液でわかるがん診断吉岡祐亮*1・落谷孝広*2生涯のうち,がんに罹る割合は約50%と試算され,2人に1人は,がんに罹ると言われている.しかし医療の発達もあり,早期発見できた場合,治療成績は格段に良くなっていることから,早期発見の重要性が増している.そのような背景のなか,体液中に病態を反映するmiRNAが循環していることが相次いで報告され,新たな診断マーカーとして注目されている.実際,体液中に存在するmiRNAと疾患に関連する報告数は急増し,がん種ごとに特異的な体液中miRNAプロファイルの作製も可能になってきた.早期診断を目指した体液中miRNA解析が検討され,将来的には,血液検査などで早期のがんを発見できる可能性がある.しかし,実用化に向けて,いくつかの問題を克服する必要があり,本稿ではmiRNAを用いたがん診断の現状と展望を概説する.