カレントテラピー 33-12 サンプル

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32 Current Therapy 2015 Vol.33 No.121174Ⅰ はじめに慢性心不全とは“慢性の心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し,末梢主要臓器の酸素需要量に見合うだけの血液量を絶対的にまた相対的に拍出できない状態であり,肺,体静脈系または両系にうっ血をきたし日常生活に障害を生じた病態”と定義される1).近年,心不全はレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(renin-angiotensin aldosterone system:RAAS)や交感神経系などの神経体液性因子の過剰な活性化としてとらえられ,治療薬として神経体液性因子をターゲットに,RAASブロッカーやβ遮断薬などが治療薬の中心となっている.本稿では日本循環器学会の『慢性心不全治療ガイドライン』1)を中心に,心不全の薬物療法について解説する.Ⅱ 収縮不全心不全に対する薬物療法心不全の多くは左室収縮機能不全に基づく心不全であり,その原因として拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM)や虚血性心疾患(ischemicheart disease:IHD)などがある.これらの病態では,RAASや交感神経系が活性化され,進行性の左室収縮能低下や左室拡大が生じ死亡につながる.したがって,RAASブロッカーやβ遮断薬など神経体液性因子に作用する薬剤が慢性心不全治療の中心となっている.表1に現在本邦で承認された心不全に対する主な薬剤と用量を示す.1 ジギタリス洞調律患者では,心不全増悪による入院を減少させたが予後は改善せず2),ジゴキシンの血中濃度に比*1 市立奈良病院循環器内科部長*2 奈良県立医科大学第一内科教授慢性心不全の診断と治療─ 最近の動向慢性心不全ガイドラインと薬物療法堀井 学*1・斎藤能彦*2慢性心不全は神経体液性因子の過剰な活性化と考えられ,その治療はそれらをブロックする薬剤が中心となっている.慢性心不全ガイドラインに沿ってその治療薬を解説する.左室収縮不全に対する治療では,第一選択薬として症状の出現していない時期からアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を投与する.ACE阻害薬に認容性がない場合にアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を投与する.また,その次に症状出現前からβ遮断薬を投与する.これらの薬剤は認容性があればできる限り多くの量を使用し,その予後を改善するエビデンスを有する.また,症状を和らげる目的で利尿剤やジギタリスを使用するが,これらは予後改善の明確なエビデンスが得られていない.拡張不全型の心不全に対しての明確な治療方針はいまだ定まってはいないが,利尿薬,ACE阻害薬,ARB,β遮断薬を症例に応じて使用する.心不全の治療は個々の症例のステージ,重症度,合併症の有無を考慮して薬剤を決定する必要がある.