カレントテラピー 33-12 サンプル

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74 Current Therapy 2015 Vol.33 No.121216臨床で使用されている現代薬(単一ケミカル)のなかにはフィトケミカル由来のものも少なくない.最近,解明が進む生薬含有フィトケミカルの薬効に関する新しいエビデンスには驚かされる.防已の主要成分であるシノメニンは化学構造式が麻薬モルヒネと類似していることもあり,以下記述の心循環作用だけでなく,鎮静・鎮痛効果も期待される.この研究ではエキス剤を使用した.Ⅲ 心臓電気薬理学的作用木防已湯は心筋活動電位に対して,活動電位振幅減少,50%および90%活動電位持続時間(APD50,APD90)延長,最大立ち上がり速度〔Vmax,Na+チャネル電流(INa)の指標〕抑制を示した5),6).木防已湯自体も抗不整脈作用を示した.単離モルモット心室筋細胞のパッチ膜電位固定法実験では,濃度0.1mg/mLでCa2+チャネル電流(ICa,0mV)を157.3±5.5%(n=6, p<0.001)増加させた(図1).また,遅延整流性K+電流(IKrec, 60mV)を262.1±7.3%(n=6, p<0.001)増加し,内向き整流K+電流(IK1 , -120mV)を9.7±2.1%(n=6, p<0.05)抑制した.防已もICa電流に対して同様の作用を表した6).木防已湯の主要フィトケミカルであるシノメニンは用量依存性に著明な心臓薬理作用を示した7).モルモット心室乳頭筋標本では,シノメニン(300μM)は活動電位の形状上,Vmaxを20.0±2.4%低下させた.APD50 , APD90を有意ではないが,延長させる傾向をみせた.モルモット単一心室筋細胞では,1mMシノメニンはICa電流を0 mVで18.2±2.1%(n=6 ,p<0.05)減少させた.同様に,IKrec電流を60mVで16.2±2.6%抑制した.IK1電流は-120 mVで47.2±3.8%抑制した.このような強いシノメニンの電気薬理学的抑制作用は,細胞外Ca2+濃度5.4mMによる過剰細胞内Ca2+濃度(Ca過負荷)下,triggered activityで誘発される後脱分極(不整脈)の発生を完全に制御した(図2).また,心室筋に対して,INa,ICa, IKrec,IK1電流を抑制し,抗不整脈作用を有することから,十分な心筋保護作用を発揮することが証明された.含有生薬成分と木防已湯を比較すると,各イオンチャネルに対して多少異なる部分がある.他の防已含有フィトケミカルであるテトランドリン(本邦の木防已湯には非含有)にもCa2+チャネル拮抗作用があるが6),マグノフロリンには心室筋細胞に対して電気生理学的変化をほとんど示さなかった.コントロール木防已湯 0.1mg/mL1mg/mL1nA200msecADpA/pF10-10-20-30-400-120 -60 0 60mVBC1mg/mL0.3mg/mL0.1mg/mL 木防已湯コントロール図1木防已湯の電気薬理作用単一モルモット心室筋のパッチ膜電位固定法による膜イオンチャネル電流.各パネルの上段:保持電位は-30mV.刺激パルスは-20mVから+60mV.内向き電流はCa2+電流(ICa),外向き電流は遅延整流性K+電流(IKrec).下段:刺激パルス-40mVから-120mVによる内向き電流K+電流(IK1)を示す.