カレントテラピー 33-12 サンプル

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76 Current Therapy 2015 Vol.33 No.121218Ⅴ 漢方薬(多成分複合剤)の加齢的特徴木防已湯と防已,およびシノメニンによる血管弛緩作用は加齢変化の影響を受け薬理作用に差異があることが判明した4).10週齢のラット大動脈で,木防已湯と防已は,NE拘縮を濃度3mg/mLで98.9±2.8%(n=6)と97.2±5.7%(n=6),それぞれ弛緩させた.一方,シノメニン100μM単独では66.5± 3.8%(n=7)の減弱が認められた.木防已湯(3mg/mL)では35週齢,65週齢の高齢ラット,いずれも強い弛緩作用を認めた(35週齢:103±3.4%, n=5,65週齢:97.5±13.5%, n=5).防已(3mg/mL)の弛緩作用は65週齢ラットで,34.9±5.7%(n=7)に減弱した.シノメニンの弛緩作用は,高齢ラットではさらに著しく減弱し,100μMで35週齢9.4±4.0%,65週齢18.6±1.5%であった(図3).一般に,現代薬(単一化学物質)の薬理作用は加齢変化を受け,加齢とともに減弱するが,漢方薬のような多成分複合剤は加齢変化を受けにくいことを,すでに報告している9)~11).木防已湯も多成分間の複雑な相互作用の結果により,加齢的血管弛緩作用の感受性減弱作用に対して抑制効果がみられた.シノメニンや他の多種フィトケミカルによる複合剤としての有益な代替・補完作用と考えられる12),13).漢方薬は多成分複合剤であるため,個々の生薬やそのなかに含有する多種の有効成分フィトケミカルの多種多様な作用点・機序を有している.それぞれの受容体,イオンチャネル,細胞内情報伝達系への作用は複雑な薬理学的相互作用によって,総括的に生体内・外で効果を表す.したがって,多様多彩な薬理効果のため,両(興奮・抑制状態)病態時でも有効性を表すことができる4).つまり,生体機能のバランスを調節し恒常性を維持する.これは,われわれのこれまでの実験から,多成分複合剤として環境条件に依存して促進,または抑制の両方向性に作用すること6),また,高齢ラットに対して,若年齢より強力な血管弛緩作用を表すことなどからも伺うことができる7).Ⅵ 臨床循環作用漢方薬の治療対象は補助療法として,慢性心不全症状を緩和し,現代医療と併用して行われるものである.利尿剤,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),β遮断薬,ジギタリス剤などを使用しながら,漢方的心不全治療が行われている.実際,木防已湯(7.5g/日,4週間)適用で,BNP低下,NYHA分類グレードを軽減させた3).木防已湯20(%)1001020 0.030.0310-weeks old35-weeks old65-weeks old10-weeks old35-weeks old65-weeks old10-weeks old35-weeks old65-weeks old0.10.11.01.03.0mg/mL3.0mg/mL0.30.33040506070809010020(%)(%)100102030405060708090100807060504030201000.1 0.3 1 3 10 30防已シノメニン100μMRelaxation Relaxation/Constriction Relaxation/Constriction********************** **** ****図3 血管弛緩作用の加齢変化大動脈の血管弛緩作用を10,35,65週齢ラットで比較した.多成分複合剤はより加齢変化(薬理反応減弱)を受けにくい.**:p<0.01