カレントテラピー 33-12 サンプル

カレントテラピー 33-12 サンプル page 28/40

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 33-12 サンプル の電子ブックに掲載されている28ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 33-12 サンプル

Current Therapy 2015 Vol.33 No.12 83治療薬解説12252)臨床試験のエビデンス(1)J-Land試験心不全患者は高率に心房細動を合併し,増悪時には頻脈を呈する.従来,心不全増悪期の頻脈に対してはジゴキシンを用いて徐拍化を行っていた.心不全増悪期の頻脈性不整脈に対して,その有用性と安全性を検証したのがJ -Land 試験である13).心拍数120 拍/ 分以上の心房細動あるいは粗動を呈した左室駆出率25~55%の患者214例を対象とし,ランジオロール群,ジゴキシン群の2群にランダムに割り付け,その徐拍効果を評価した.ランジオロール投与は,1μg/kg/分から投与開始し10μg/kg/分まで増量可とし,2~72時間持続静注を行った.ジゴキシン投与は,初回0.25mg,72時間以内は追加可とした.投与開始2時間後に心拍数が110拍/分未満かつ20%以上の低下を主要評価項目とし,その達成率はジゴキシン群の13.9%に比べ,ランジオロール群で48.0%と有意に高かった(図5)13).洞調律復帰率,症状改善率,左室収縮率の改善率,有害事象発生率は,両群に差はなかった.すなわち,心機能の低下した心不全急性期における頻脈性心房細動あるいは粗動の心拍数調節に,ランジオロールは安全かつ有用であり,ジゴキシンより速やかに心拍数の低下を得られることが示唆された.Ⅲ 心不全治療にどう活かすか?まず2つの薬剤は性質が異なり,臨床で活躍する場が異なることを理解すべきである.すなわち,ランジオロールは静注薬であり,主に心不全増悪急性期の心拍数コントロールに用いる.一方,ivabradineは経口薬であり,慢性期の心拍数コントロールに使用される.心不全急性期の頻脈性不整脈は心不全のさらなる増悪を惹起するため,特に頻脈誘発型心不全では心拍数コントロールを行うことが多い.日本循環器学会『急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)』ではジギタリスの使用が記載されているが14),J -Land試験の結果に基づき,近年,短時間作用型β1遮断薬の適正使用に関するステートメントが出された15).急性心不全に合併する頻脈性不整脈に対して,ランジオロール1μg/kg/分で静脈内持続投与を開始し,効果が不十分な場合には1~10μg/kg/分で調節する.残念ながら,急性期の心拍数コントロール目標値は確立されていないが,急性心不全患者の入院時心拍数と予後をみた研究結果に基づき16),110 拍/分を初期目標値に設定することが多いようである.収縮期血圧90mmHgを下回るような低血圧症例への投与は推奨されない.左室駆出率25%未満の重度心機能低下例はJ -Land試験の対象に含まれておらず,このような症例では血圧や心拍数を連続的にモニターし,血行動態および随伴症状に注意が必要である.また,頻脈が心拍出量を保つ代償機転としての結果なのか,または頻脈で血行動態が破綻しているかの鑑別が重要であるが,実際,これを見分けるのは難しい.筆者らは,左室駆出率のみならず,左室拡張末期径や1回拍出量,僧帽弁閉鎖不全の程度にも注目し,いわゆる小さい心臓,硬い心臓の場合は,心拍数の低下が心拍出量の低下を容易にまねき得るため,より一層の注意を払っている.投与中,過度の血圧低下や徐脈をきたした場合には,直ちに投与を中止する.必要に応じて,補液や昇圧剤投与を行うが,交感神経刺激薬を用いる場合にはα刺激作用が前景に立つため,過度の昇圧に注意して投与すべきである.現時点で,心不全慢性期の心拍数コントロールの主体は,やはり経口β遮断薬と考えられる.SHIFT主要評価項目の達成重篤な副作用出現あるいは副作用による治療中止p<0.0001ランジオロールジゴキシン48.013.93.2 0(%)100806040200図5 J-Land試験:ランジオロールおよびジゴキシンの徐拍効果主要評価項目=投与開始2時間後に心拍数が110拍/分未満かつ20%以上の低下.〔参考文献13)より引用改変〕