カレントテラピー 33-12 サンプル

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86 Current Therapy 2015 Vol.33 No.121228糖尿病と心不全名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科講師 坂東泰子名古屋大学医学部附属病院循環器内科教授 室原豊明1 糖尿病合併症としての心不全糖尿病患者においては,古くはフラミンガム研究やSOLVD研究の解析に示されたように,心不全発症リスクが男性患者で4倍,女性患者で5倍と高く,米国心臓病協会は10年以上前に「糖尿病は心臓病である」との声明を発表し,最近では,欧州心臓病学会が,糖尿病と心不全の関係を,「Deadly intersection(死の交差点)」と表現した(2013年ESC/EASDジョイントシンポジウム).逆もまた真なり,CHARM試験など慢性心不全の代表的大規模臨床研究において慢性心不全患者での糖尿病有病率は約30%(一般検診患者の有病率15%)であり,糖尿病と心不全は互いに深く関連する疾患と考えられる.血管造影上,冠動脈には明らかな虚血性心疾患の原因となる有意狭窄は認めないにもかかわらず,原因不明の心機能障害をきたす糖尿病合併心不全例が存在することから糖尿病性心筋症(diabetic cardiomyopathy)と呼ばれているが,心不全の原因にかかわらず,糖尿病の合併が心機能を増悪させることも示唆されている.2 糖尿病と心不全:臨床的特徴糖尿病が心不全に与える影響は,冠動脈疾患を合併する場合と合併しない場合に大きく2つに分類もできるが,糖尿病による心機能への影響の特徴として,左室拡張機能障害がある.糖尿病による左室拡張機能障害の有病率は,血糖コントロール良好な糖尿病患者においてでさえ60%に至るとの報告もあり,糖尿病性拡張不全は冠動脈疾患に次いで頻度の多い心臓合併症ともいえよう.拡張不全をきたす主な原因としては,心臓毛細血管傷害・線維化・病的左室肥大が挙げられる.もう一つの特徴は,糖尿病による易うっ血性である.インスリン作用不足はNa+貯留を引き起こすことが虚血性心疾患におけるうっ血性心不全発症率上昇の原因となることや,高頻度に合併する糖尿病性腎症の影響もまた考慮される.3 おわりに2013年,欧州心臓病学会,米国心臓病協会はともに各糖尿病学会との連携のもとに公式診療ガイドラインを出版したが,いまだ確定的でない部分も残されている.白人とは糖尿病病態背景の異なる日本人に向けた,糖尿病合併心不全患者の血糖値管理指標ならびに治療薬選択ガイドラインの整備が待たれる.慢性心不全の診断と治療─ 最近の動向