カレントテラピー 33-12 サンプル

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8 Current Therapy 2015 Vol.33 No.121150Ⅰ はじめに生活習慣の欧米化に伴う虚血性心疾患の増加,高齢化による高血圧や弁膜症の増加などの循環器疾患における疾病構造の変化は,心不全患者増加の要因となっている.心不全患者の増加は,入院医療費を押し上げ,社会における医療経済上の問題としてもとらえる必要があり,効果的,効率的な予防および治療法の確立が求められている.近年,欧米や日本のみならず,世界各国で実施された疫学研究において,先進国ばかりでなく開発途上地域においても,心不全が重要な健康問題であることが明らかにされている.本稿では,世界における心不全の疫学研究を踏まえ,心不全患者数の推移とその背景および臨床的特徴を概説する.Ⅱ 世界的な高齢化と心不全の発症率心不全患者の多くは高齢者であり,高齢化の進行は心不全の増加に直結する.国際連合が発表した世界の高齢化率の推移をみると,人口の高齢化はわが国や欧米諸国のみならず,開発途上地域においても急速に進行すると予測されている(図1)1).心不全患者の平均年齢の推移について,Framingham研究によると1950~1969 年の平均年齢が62.7歳であったのに対し,1990~1999年では80歳と発症年齢が大幅に上昇している2).さらに,オランダで実施されたRotterdam研究でも,男女とも,年齢の上昇に伴い心不全の発症率が上昇した(図2)3).このような研究結果は,世界的な高齢化が,心不全患者数の増大につながることを示している.*1 北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学教授*2 北里大学看護学部看護システム学教授慢性心不全の診断と治療─ 最近の動向慢性心不全の疫学― 慢性心不全患者は激増している―筒井裕之*1・眞茅みゆき*2心不全患者の多くは高齢者である.したがって,先進国における高齢化の進行は,心不全の増加に直結することが示されている.さらに,高齢化が進んでいない開発途上地域においても,心不全は重要な健康問題である.高齢化に伴って増加する高血圧は,心不全の発症や進展に影響を及ぼし,広く共通した心不全の治療・管理上の課題である.さらに,高齢心不全患者は心不全増悪による再入院を反復するとともに心疾患以外の他臓器疾患の合併も多く治療や管理が困難な場合も多い.今後,先進国に加えて開発途上地域でも高齢化が進むことから,心不全の増加(Pandemic)が予測され,高齢化を見据えた心不全治療の確立が求められる.