カレントテラピー 33-12 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.12 11慢性心不全の病態と診断1153理が重要であることを示している.JCARE -CARD研究によると,高齢心不全のなかでも特に80歳以上の患者の割合は29%を占め,特に女性,Body Mass Indexが低値,心不全の基礎心疾患として,虚血,弁膜症,高血圧が高率,糸球体濾過量推定値(estimated glomerular filtration rate:eGFR)およびヘモグロビン値が低値,左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)が多いといった特徴を有し,非高齢患者に比し予後不良であった14).CKDや貧血は心不全患者の予後を左右するため,治療戦略に大きな影響を与える.JCARE-CARDの登録症例を対象にCKDが長期予後に与える影響について解析を行った結果,eGFRが30mL/分/1.73m2未満あるいは透析中の患者では,eGFRが60mL/分/1.73m2以上の患者と比較し,全死亡あるいは心不全増悪による再入院のリスクが2.57倍に上昇することが明らかとなった15).また,貧血についてもJCARE-CARD登録患者で解析した結果,ヘモグロビン値13.7g/dL以上の患者と比較し,ヘモグロビン値10.1g/dL未満の患者の全死亡あるいは心不全増悪による再入院のリスクは,1.83倍上昇することが示され,生命予後の重要な規定因子であることが明らかとなった16).心不全,CKDおよび貧血が相互に関連しながら,悪循環を繰り返す病態は心腎貧血症候群とも呼ばれる.JCARE-CARD研究では左室駆出率が50%以上のHFpEFの割合は26%であった17).駆出率が低下した心不全(HFrEF)とHFpEFにおける65歳以上の高齢者の割合はそれぞれ61%,81%であり,HFpEFはHFrEFに比し,より高齢者の割合が高かった.HFpEFの原因疾患として高血圧が44%と多数を占め,合併疾患として心房細動(38%),貧血(27%)を有する割合が高かった.退院時の投薬率を比較すると,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬はHFpEFが25%に対し,HFrEFは44%,β遮断薬はHFpEFが40%,HFrEFが66%であった.HFpEF症例でこれらの治療薬の投与率が低いことには,HFpEFを対象とした大規模臨床試験でレニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬やβ遮断薬の明確な予後改善効果が示されていないことが影響していると考えられる.さらに,HFrEFとHFpEFの予後を比較すると,両者に有意差を認めなかった.HFpEFとHFrEFの死因を比較したところ,突然死を含む心血管死の割合はHFrEFで高率であった一方,心不全死の割合は同等であり,非心血管死はHFpEFで高率であった18).HFpEFはHFrEF同様,予後不良であることに加え,基礎心疾患以外の合併疾患の管理も含めた効果的な治療戦略の確立が求められる.ATTEND registryでは,2007~2011年に心不全の診断により入院した4,842名の患者が登録され,その特徴として,高血圧を69%,糖尿病を34%の患者が有し,これらの患者の30~40%が心不全による入院の既往を有していた19).1,200Per 100,0001,0008006004001989 1994 1999 2004年1979 19842000男性主要疾患に心不全合併男性主要診断が心不全主要診断が心不全女性主要疾患に心不全合併女性図3National Hospital DischargeSurveyにおける年齢調整後の心不全による入院率(1979~2004年)〔参考文献4)より引用改変〕