カレントテラピー 33-2 サンプル

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46 Current Therapy 2015 Vol.33 No.2138ピリチュアルな苦痛が存在している.例えば,認知症患者の家族が,自分の家族のことであっても,人の命に直結するような決定にかかわらなければならない精神的なつらさを訴えることはしばしばである.非がん疾患において,特に,どのような医療選択をして,どこで最期を迎えるかの意思決定支援は在宅緩和ケアにおいてきわめて重要である.EOLケアチームの提案するケアのプロセスについては,次項で述べる「人生の最終段階における医療体制整備事業」の研修プログラムのなかに含まれている.後者については,在宅緩和ケアの場においては,よりがん患者の意思決定支援の重要性が高いようにも思う.非がん・高齢者疾患に比べ,急激な病状変化をきたすため,患者家族の身体的・精神的動揺が激しいのである.例えば,病院において,最期の場所の選択など,ある程度の難しい医療選択についての意思決定支援をしていたとしても,急激に病状や症状が変化するなかで,患者家族のこころは動揺する.私見であるが,高度な一体感とチーム連携を特徴とした在宅緩和ケアの拠点が,必要かもしれないと思う.急激に変化する病状にも対応できる意思決定支援が重要であるように思う5).Ⅳ 人生の最終段階における医療体制整備事業ここでは,筆者らが事務局を務める平成26年度の厚生労働省事業である,「人生の最終段階における医療体制整備事業」について言及するなかで,意思決定支援にフォーカスをあてて,在宅緩和ケアの課題と展望を述べたい.厚生労働省は,2007年に『終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン』を策定したが,十分に普及しているとは言えない.そのため,平成26年度事業において,看護師,医療ソーシャルワーカー等の専門職を対象とした,人生の最終段階における相談支援体制を構築するモデル事業,医療体制整備事業を開始した.全国公募で選ばれた10病院に所属する「相談員」は,2014年8月22・23日の2日間の研修プログラムを修了した後,各医療機関に戻り,相談支援体制を構築している.意思決定支援に関する国家プロジェクトである.「相談員」の研修プログラムは,難しい医療上の選択について,より倫理的な判断をし,法律的懸念にも配慮しながら,より侵襲の少ないコミュニケーションができるように,患者,家族,医療者を支援するための考え方やスキルを学ぶことができ,ロールプレイに重点をおいた構成になっている.医療体制整備事業の骨格は,研修を修了した相談員が各病院に戻り伝達研修を行う.そして,患者,家族からの難しい医療判断の相談に応じつつ,時に,倫理的判断支援機能をもつ医療ケアチームを構築し,臨床倫理委員会を設置することが求められている.このように,研修を受けた相談員が,自らの活動を支える医療体制を整備し,患者の意思を尊重した,意思決定支援を推進することを目的にした事業が展開されている.この事業展開が,在宅にも普及した時,疾患を限定しない在宅緩和ケアの推進に寄与するものと信じている(図3)6).Ⅴ おわりに私の考える在宅緩和ケアの課題は,以下の4点である.①病院でも,意思決定支援に重きを置いた,疾患を限定しない緩和ケアを推進すること,②在宅においても,改善の難しい苦痛症状である呼吸困難に対応できる環境を整えること,③在宅においても,難しい医療判断を支援する「相談員」を育成すること,④均てん化されつつある在宅医療にあって,個別の問題として,急激な病状の悪化を伴うような医療依存度の高い疾患群においては,地域に高度な一体感とチーム連携をもつ在宅緩和ケア拠点が活躍できる環境を整えること.上記課題に対して,筆者の願望を交えた展望として,以下の4点を挙げたい.①主な対象ががん患者である全国の病院緩和ケアチームが,非がん・高齢者疾患も対象にできるように柔軟なシステム変革がなされ,ひいては在宅緩和ケアにも寄与するだろう.