カレントテラピー 33-2 サンプル

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94 Current Therapy 2015 Vol.33 No.2186Ⅰ 生活の質(quality of life:QOL)とは生活の質(quality of life:QOL)は,最近特に注目されるようになってきた概念であり,医学研究においても,アウトカムとして,しばしば取り上げられるようになった.しかしながら,やや曖昧な使われ方をすることも多く,定義が不明確な場合も少なくない.Gillらは,QOLをキーワードにした研究を検討し,QOLの定義が明確にされていたのは全体の15%に過ぎなかったと報告している1).QOLの概念・定義については,必ずしも厳密な意味においての合意が得られているわけではないが,世界保健機関(World Health Organization:WHO)の健康に関する定義,すなわち「単に疾病がないということではなく,完全に身体的・社会的に満足のいく状態であること」2)が,QOLの概念に相当するものと考えられることが多いようである.QOLは,幅広くさまざまな要素を包含し,また,影響を受けるが,おおむね,健康に関連するQOLと健康と直接は関連しないQOLに大別される.健康に関連するQOLは,健康に関連しないQOL,生きがいや幸福・満足感などに包含され,人生観,宗教,疾病,医療,個人や社会の特性に影響を受ける.近年,QOLの構成要素については,コンセンサスが形成されつつあり,少なくとも「身体機能」,「心の健康」,「社会生活機能」の3つの要素を含むものと考えられるようになってきた3).また,Spilkerらは,さらに,経済的・職業的状態と宗教的・霊的状態も加えた5つの領域で構成されると考えている4).QOLの概念は,基本的には,病者と健康者を区別せず,疾病と健康という二元論的な考え方を超えて,健康度をより連続的に評価するところに,その特徴をもつ.* 名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学講師治し支える医療としての在宅医療の現状と展望在宅医療におけるQOL評価について梅垣宏行*生活の質(quality of life:QOL)は,世界保健機関(world health organization:WHO)の健康に関する定義である「単に疾病がないということではなく,完全に身体的・社会的に満足のいく状態であること」に近い概念であり,「身体機能」,「心の健康」,「社会生活機能」などから構成される.高齢化の進行するわが国では,多くの慢性疾患を抱え日常生活動作(activities ofdaily living:ADL)の低下した高齢者が増え,地域包括ケアの普及が目指されているが,そのためには在宅医療の一層の充実が求められる.多くの慢性疾患を抱えた高齢者への在宅医療においては,個々の疾病の治癒・克服よりも,QOLの維持・向上が求められることが多く,そのためにはQOLの正確な評価が求められる.今回われわれは,在宅医療を受ける患者のためのQOL評価票の作成を試みたので,その結果の一部を紹介する.