カレントテラピー 33-2 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.2 95187Ⅱ QOLが注目される背景近年,わが国の人口は,急速に高齢化しており,すでに65歳以上の高齢者の占める割合である高齢化率は25%を超え,国民の4人に1人が高齢者である社会となっている.高齢化に伴い,疾患は慢性化する傾向にあり,また,併存する疾患数も増加する.そのため,医療を必要とする人口はますます高齢化しており,医療の現場においては,慢性疾患の比重が増加している.こうした背景の下,現在わが国では,治癒を目指す疾病克服型の医療から,健康維持型の医療へのパラダイムシフトが起きつつあるといえよう.健康維持型の医療においては,一つひとつの疾病の治癒・克服を目指すよりも,人生の全期間におけるQOLの総和を最大化することにその目的があるともいえる.したがって,その健康維持型の医療のあり方を考えるうえでの重要なアウトカムとして,QOLが注目されていると考えられる.Ⅲ 高齢者医療におけるQOL先述したように,高齢者においては,慢性疾患の問題の比重がより高く,治癒よりもケアが重視されることも多い.そのケアのあり方を考える指標としてQOLは大きな役割を果たすと考えられる.また,高齢者は,その予備力の低下により,特に日常生活動作(activities of daily living:ADL)の低下をきたしやすく,QOLが低下しやすい.このようなことを背景に,QOLは,高齢者医療を考えるうえで,必須の概念であると思われる.日本老年医学会,全国老人保健施設協会,日本慢性期医療協会の合同で作成された『高齢者における適切な医療提供の指針』においても「QOL維持・向上を目指したケア」の必要性が謳われ,高齢者においては,容易にQOLが低下するために,QOL維持のために疾患の予防やリハビリテーションの早期開始の必要性があると記載されている.また,高齢期の慢性疾患に対しては「治癒を目指したやみくもな治療よりも症状緩和が重要である」とされ,「QOLを低下させる症状の緩和と共にQOLの維持・向上に努める」とも記載されている.さらに,患者のQOL維持に生活の場の問題は重要であり,適切な医療提供の場を選択するQOL維持のために生活の場が重要であるとして「生活の場に即した医療提供」の必要性も記載されている5).Ⅳ 在宅医療とQOL現在,国は,地域包括ケアシステムの実現を推進しているが,その実現のためには,地域完結型の医療が必須であり,快適な生活の場である住宅における在宅医療の充実が求められる.したがって,QOLは,まさに在宅医療において,最も重視しなければならないことのひとつであり,在宅医療の重要なアウトカムとしてQOLが存在し,快適な場において生活をしながら医療を受け,QOLを維持することへの期待は大きい.表1 QOL評価項目の候補質問項目得点穏やかな気持ちで過ごせた258人として大切に扱われた257充実した人生だったと感じていた254体の苦痛がなく過ごせた250痛みがなく生活できた247楽しみになるようなことがあった246家族,友人との時間を十分に持てた244思い出やこれからのことを話す相手がいた243望んだ場所で最期が迎えられた242おいしく食べられるものがあった242医師を信頼していた239望んだ療養場所で過ごせた236落ち着いた環境で過ごせた236気楽な気持ちで過ごせた230トイレに困らなかった230入院時より生活に満足できた225介護サービスや在宅診療(看護)に満足していた222身の回りのことはたいてい自分でできた213体以外のことで心配事があった198人に迷惑をかけてつらいと感じていた196苦痛の除去以外の治療は望まなかった182