カレントテラピー 33-3 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.3 71代替療法289動療法は有用である可能性がある一方,運動強度が強いと心房の肥大などをもたらし,心房細動になる危険性を高めると考えられる.高齢になってからの運動は,好影響が悪影響を上回る可能性があるため,症例に応じて,運動に対する心房細動への影響が異なっていると考えられる.高強度の運動は,若年~中年層では心房細動のリスクを上げてしまう可能性があるため,症例に応じ,適切な運動強度の設定が必要である.Ⅲ 心房細動合併症例に対する運動療法1 心房細動患者に対する効果洞調律から心房細動に移行すると運動耐容能は低下するとされる10).運動耐容能低下の機序としては,心房収縮消失・頻拍・心拍の不整による左室拡張期容量の減少で起こる1回拍出量低下や,運動時の一酸化窒素による血管拡張反応の減弱11)が考えられる.また動悸や心不全症状の出現により,QOLの低下も認める.心房細動患者に対し運動療法を行うことで,これらの運動耐容能低下とQOL低下を改善させることが報告されている.Mertensらの報告では,20人の慢性心房細動患者を対象に最大酸素摂取量(peak VO2)の60~80%の強度で週5回の運動療法を1年間施行し,運動耐容能の指標であるpeak VO2が15%改善した12).Vanheesらは,19人の慢性心房細動患者と44人の洞調律の対照患者に,心拍数予備能の60~90%の運動強度で週3回の運動療法を3カ月間施行し,運動療法の効果を検討した13).ベースラインでの心房細動群のpeakVO2は,対照群と比較して有意に低下していたが,運動療法により対照群と同程度にpeak VO2が有意に改善した.Hegbomらは,75歳以下の慢性心房細動患者を運動群と対照群に割り付け,運動群に最大心拍数の70~90%の運動強度で週3回の運動療法を2カ月間施行し,前向きに運動療法の効果を検討した14).運動療法により運動耐容能は有意に改善したが,運動非施行群では運動耐容能は改善しなかった.また,有意にQOLを改善することを示した15).同様に,Osbakらの報告でも,12週間の有酸素運動による運動療法で対照群と比較し,運動耐容能,QOLの有意な改善と,安静時心拍数の低下を認めた16).以上から,慢性心房細動患者に対しても運動療法は有効と考えられるため,積極的に行うことがガイドラインでも推奨されている.なお,運動療法により,心房細動患者のイベント発生抑制や予後改善を認めたという報告は現在のところない.2 心臓外科術後の心房細動に対する効果心房細動は心臓外科手術後に発生する不整脈で最も頻度が高く,冠動脈バイパス術(coronary arterybypass grafting:CABG)後患者の16~40%に,弁膜症後患者の33~49%に,CABG+弁膜症手術後患者では36~63.6%の患者に術後心房細動が起こるとされている17)~19).心臓外科手術後の心房細動は術後5日以内,特に術後24~72時間に最も多く出現する17)が,術後心房細動の持続時間は短く,50%の患者は48時間以内に洞調律に戻る20).ただし,術後の心房細動への移行は,術後の心不全の増悪や脳梗塞のリスクを増加させ,ICU入室期間を延長させ,さらに心臓術後の死亡率を上昇させてしまうため,心房細動の発症を予防することが重要である21).運動療法は,心臓外科手術後の心房細動発症を抑制するとされており,これは交感神経の緊張を低下させる効果によるものと考えられる.Herdyらは,CABG予定で術前に5日以上心臓・呼吸リハビリテーションが可能な患者をリハ群と対照群に割り付け,術後合併症や入院期間を前向きに検討した22).術後の心房細動出現は,β遮断薬投薬下でも,リハ群で有意に抑制された.また,リハ群で有意に胸水,無気肺,肺炎などの呼吸器合併症や入院期間も減少させた.以上から,心臓外科手術後の心房細動の抑制には,手術前からの心リハ開始と術後早期からの心リハ再開が奨励されている.Ⅳ 運動療法の実際心房細動合併の心疾患症例では,通常の心疾患の運動療法同様,有酸素持久運動と筋力トレーニング