カレントテラピー 33-3 サンプル

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8 Current Therapy 2015 Vol.33 No.3226Ⅰ はじめに心房細動(atrial fibrillation:AF)は高齢者に多くみられる不整脈疾患であり,日常診療でも遭遇することの多いcommon diseaseであるが,重症脳卒中の原因疾患としても重要である.近年わが国でも,人口の高齢化が進むにつれ患者数は年々増加の一途をたどっている.欧米や,わが国からの主立った報告をみても,男女とも加齢にしたがってAF有病率は上昇し,男性により多いことが示されている.わが国のAF有病率は,欧米に比べるとかなり低いとされ,その背景としては,疾病構造の違いや体格などを含む人種差が原因であろうと理解されてきた.また,AF患者数が増加している背景としては,単純な人口の高齢化だけでなく,時代の変化に伴う疾病構造の変化も重要な要因である.昔は,リウマチ性弁膜症を背景としたAFが多くみられたが,今はそうしたものはむしろ少数で,高血圧や糖尿病を主とする生活習慣病を背景としたAFがその大半を占めるようになってきた.このように,AF有病率は,国や人種によっても,地域ごとの人口構成の違いによっても,また時代によっても異なっている.本稿では,国内外の複数のデータベースを引用しながら,AF患者の有病率,罹患人口について概説する.データベースの母集団は,それぞれに国,人種,地域,時代などが異なっており,また対象者も異なっているため(住民健診,保険加入者など),それに伴って数字に違いが生じるのは当然のことであり,そのことがAF患者の多様性を反映していることを念頭におきながら数値をご覧頂きたい.* 国立病院機構京都医療センター循環器内科部長心房細動の診断と治療の最近の動向―進むべきか,退くべきか心房細動罹患人口とその合併疾患―世界と日本―赤尾昌治*心房細動(atrial fibrillation:AF)は高齢者に多くみられる不整脈疾患であり,重症脳卒中の原因としても重要である.男女とも加齢にしたがってAF有病率が上昇し,男性により多い.わが国のAF有病率は総人口あたりで0.6%,70歳以上で3%程度と報告され,欧米(総人口あたりで1%以上,70歳以上で5~10%)に比べるとかなり低いが,人口の高齢化や,高血圧を主とする生活習慣病を背景としたAFの増加で,わが国でもAF患者人口は増加の一途をたどっている.AFの合併疾患としては,高血圧の頻度が高く,50~80%との報告が多い.欧米と日本の差でもっとも顕著なのは虚血性心疾患の頻度であり,欧米では30%以上,日本では10~15%の頻度であった.AFは単一の疾患というよりは,加齢や多くの基礎疾患を背景とした症候群であり,その背景はきわめて多様性に富む.国・人種,地域,時代によってもさまざまに実態は異なっているため管理・治療方針も患者ごとに個別最適化する必要がある.