カレントテラピー 33-3 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.3 11心房細動罹患人口と診断229みられたのは全体(40歳以上)で1.6%(男性2.4%,女性1.2%),60~79歳で1.5%(男性2.3%,女性1.0%),80歳以上で2.8%(男性3.5%,女性2.5%)であった.ここで,筆者らが京都市伏見区において2011年3月から行っている伏見心房細動患者登録研究(伏見AFレジストリ)8)のデータをご紹介したい.本研究では,伏見区の医療機関に通院するAF患者をできる限り全例登録して,患者背景や治療の実態調査,予後追跡を行っている.伏見区は,居住人口が28万人を超える京都市内最大の行政区であり,多彩な年齢層,職種が混在し,わが国の典型的な都市型人口構成を有する.登録患者総数は,2014年4月末現在で3,985例である.登録基準に伏見区民であることは問うておらず,伏見区外の住民も含まれるため,あくまで参考値であるが,伏見区28万人の人口で除すると有病率は1.4%(男性1.7%,女性1.1%),70歳代では6.0%(男性7.1%,女性3.4%),80歳以上では7.6%(男性10.5%,女性6.4%)にAFがみられたことになる.この,総人口あたりの,あるいは高齢者層でのAF有病率は,上記の従来のわが国のデータを大きく上回る数値であった.従来の心血管疾患全国調査,日本循環器学会疫学調査,倉敷市健診のデータはいずれも,健診を受診する,あるいは健康調査に応募するような,比較的若く,疾患に対する関心も高い集団を対象としていること,そして健診の一回の心電図検査でAFを指摘された人数をもとに患者人口,有病率が推算されていることに注意したい.したがって,こうした範疇に入らない高齢者や,多くの発作性AFは含まれていないことになる.未発見,未受診など医療機関にかかっていない人や,比較的発作頻度の低い発作性AFも含めると,AF患者数はさらに多く存在する可能性がある.Ⅳ 心房細動の合併疾患調査の年代,母集団,人種などによってAF患者の合併疾患には差がある.米国のATRIA研究4),欧州のEuro Heart Survey9),国際多施設のGARFIELDレジストリ10),そしてわが国のJ -RHYTHMレジストリ11),心研データベース12),伏見AFレジストリ8)の報告を,表3にまとめた.いずれの報告でも,高血圧の頻度が高く,50~80%の数値を示した.欧米と日本の差でもっとも顕著なのは虚血性心疾患の頻度である.欧米では30%以上,日本では10~15%の頻度であった.同じわが国のなかで比較しても,伏見AFレジストリ登録患者の臨床背景は,J -RHYTHMレジストリや心研データベースと好対照をなす.J -RHYTHMレジストリは,日本心電学会が主体となって2009年から開始されたわが国最大のAF患者データベースであるが,日本全国の循環器専門の大病院からの症例登録が大部分を占める.また,心研データベースは,東京都心部の高度医療機関である心臓血管研究所付属病院の外来患者が母集団である.伏見AFレジス02040608010012000.20.40.60.81.01.2年2005 2010 2020 2030 2040 2050患者数(万人)有病率●(%)図わが国における心房細動患者数と有病率の将来予測〔Inoue H, et al:Int J Cardiol 2009, 137, 102-107より引用改変〕