カレントテラピー 33-4 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.4 53睡眠障害医学の最前線371果が薄いことが確かめられている12).これは不眠があくまでもこれらの精神疾患に併存する症状であり,精神疾患の中核病態を反映しない可能性を示唆している.だとすると,PTSDに認められるREM密度増加は,高率に併存する大うつ病の影響により生じる可能性を否定できない.Ⅲ 精神疾患特有の不眠症状慢性不眠は約8割の大うつ病患者に随伴する.発病早期より出現し,大うつ病の中核症状が治癒・消退した後もしばしば残遺不眠として患者を苦しめる重要な症候である.大うつ病にみる不眠は,入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒,熟眠障害のすべての症候が混在して生じるが,PSGでは,疾患特異的な所見が見出されている13).大うつ病患者のPSG所見では,睡眠の断片化,SWSの減少とともに,REM潜時(入眠後REM睡眠出現時間)が短縮し,REM密度(REM睡眠中の眼球運動出現率)が増加することがさまざまな研究で一致した所見として報告されている13).なかでも,REM関連所見は,病期によらず認められ,大うつ病の生物学的指標(trait marker)のひとつと考えられている14).本所見は,従来診断に従うと,反応性うつ病より内因性うつ病により典型的であることから,単なるストレス反応状態を反映しているというよりも,大うつ病の特異的病態生理を反映した所見と考えられている15).モノアミン神経伝達調整を介し治療効果を発揮すると考えられている抗うつ薬の薬理作用もREM睡眠を抑制することや,REM睡眠剥奪が抗うつ作用を示すことも,REM睡眠指標が大うつ病の病態生理と関連することの傍証となっている.他方で,大うつ病には概日リズム機構の障害が関与している可能性も示唆されている.大うつ病では概日位相の前進が報告されており,大うつ病で高頻度に生じる早朝覚醒や,午前中に増悪する気分の日内変動は,これを反映する症状と考えられる.概日リズム制御システムと連動し睡眠・覚醒制御にかかわるメラトニンやオレキシンの分泌をはじめ,種々の生理機能の概日変動振幅がうつ病で低下している16),17).REM潜時の短縮や,REM密度の増加はこうした概日リズム位相の前進を反映した所見である可能性も示唆され,大うつ病の中核病態と概日リズムの障害の関係性が疑われる背景となっている.双極性障害の不眠症状は,うつ病相においては大うつ病と類似の不眠症状が認められるが,躁病相では睡眠欲求が減少しているために睡眠が短縮される.しかし,双極性障害では睡眠の分断化や段階1睡眠の増加とともに,REM潜時の短縮やREM密度の増加といった,大うつ病と類似したPSG所見が報告されており18),大うつ病との病態生理上の類似性(共通性)が示唆される.統合失調症患者も,特に病初期および再燃期には高率に多彩な不眠症状を呈する.メタ解析で示された統合失調症におけるPSG所見の特徴は,入眠潜時の準備因子気分・性格誘発因子心理ストレス維持因子睡眠環境・睡眠習慣不眠閾値不眠重症度時間経過急性不眠慢性不眠図2慢性不眠成立モデル