カレントテラピー 33-4 サンプル

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8 Current Therapy 2015 Vol.33 No.4326Ⅰ はじめに不眠の訴えは加齢に伴い増加するが,超高齢化社会となった現在では不眠はcommon diseaseと言える.一般人口を対象とした疫学調査によれば,日本成人の21 . 4%が不眠の訴えを持ち,14 . 9%が日中の眠気に悩み,6 . 3%が寝酒あるいは睡眠薬を常用している1).睡眠障害の症候は,不眠,過眠,睡眠スケジュールのずれ,睡眠中に起こる異常な精神的・身体的現象などさまざまである.本稿では不眠を主訴とする睡眠障害の病態,診断基準を示し,その治療法について概説する.Ⅱ 不眠の病態睡眠は生命活動の維持において不可欠である.ヒトを取り巻く自然環境,社会環境,個人体内環境の3つが睡眠に影響を及ぼすが,個体要因に焦点を当てると,脳の覚醒機構をさらに刺激するような身体的,精神的,心理社会的ストレス,さらに薬剤因子により睡眠は妨害される.不眠の病態生理は,前脳の睡眠系を阻害する諸要因,脳幹網様体賦活系の覚醒レベルを刺激する諸要因(疼痛,不快,不安,知覚刺激の増加等)が複合的に関与して,入眠困難や睡眠維持障害をもたらす2).入眠困難では,脳幹網様体賦活系をさらに活性化させる要因(不安,痛み,かゆみ等)が関連する.睡眠維持障害では,徐波睡*1 東京慈恵会医科大学精神医学講座准教授*2 東京慈恵会医科大学精神医学講座*3 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター院長睡眠-覚醒障害と関連疾患― その対策不眠障害小曽根基裕*1・坂本 聡*2・伊藤 洋*3わが国では超高齢化に伴い睡眠薬の使用量が年々増加し,適正使用が求められている.その流れのなかで,2014年からは3剤以上の使用にはペナルティが課せられるようになり,厚生労働科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループにより『睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン』が作成された.不眠症とは,適切な時間帯に床で過ごす時間が確保されているにもかかわらず,夜間の睡眠困難があり,日中の生活に質の低下がみられる状態である.不眠を訴える場合,身体疾患や精神疾患,また閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)やレストレスレッグス(むずむず脚)症候群(restless legs syndrome:RLS)など,不眠を呈する疾患との鑑別がまず重要である.治療に際しては,睡眠衛生指導を基本とし,薬物療法は必要に応じて行う.本稿では,不眠症の病態と診断,鑑別すべき疾患についてまず述べ,治療については,認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT)などの非薬物療法と睡眠薬の使用法について概説する.