カレントテラピー 33-4 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.4 9327眠に関連するセロトニン,レム睡眠に関連するアセチルコリンなどの神経伝達物質の分泌を阻害する因子が関連する.不眠症の病態仮説として,過覚醒仮説(hyperarousal hypothesis)が有力である.不眠症は覚醒から睡眠への移行が脳代謝のうえでもスムーズにいかないことが報告されており,睡眠不足とは異なり日中過眠をきたさない.もう一つの仮説は,徐波睡眠欠如仮説(delta sleep deficit hypothesis)がある.中途覚醒や早朝覚醒など睡眠維持機構の障害は,徐波睡眠発生機構の障害と関連しているとされる.最近の身体疾患と睡眠時間の関連に関する疫学研究では,6~7時間程度の睡眠をとっている人は,高血圧,糖尿病,脂質異常症などの身体疾患罹患の頻度およびリスク,うつ病罹患の頻度が,短時間睡眠や長時間睡眠の人と比べて少ないことが明らかにされている3).Ⅲ 不眠症の診断症候論的な不眠の定義は,2013年の睡眠障害国際分類改訂版によるものが臨床的に有用である4).これによれば,A)入眠困難,睡眠維持困難,早朝覚醒などの夜間の睡眠困難の存在,B)適切なタイミングと適切な環境下で起こる,C)夜間の睡眠困難により疲労,不調感,注意・集中力低下,気分変調などの日中の問題が生じる場合に不眠症と診断される.すなわち,適切な時間帯に床で過ごす時間が確保されているにもかかわらず,夜間睡眠の質的低下があり,これによって日中に生活の質(quality of life:QOL)の低下がみられる場合を不眠症とする.日中のQOL低下を中心に不眠症を考えることは臨床的に大きな意味を持つ.不眠治療では,眠れないことにこだわる患者の目を,眠れないために生じたQOL低下に向くように指導し,不眠により損なわれたQOL を改善することが治療のゴールとなる.不眠症の的確な診断には,不眠の型,睡眠パターン,随伴事象,既往歴,睡眠衛生,ベッドパートナーの情報などが不可欠である.概日リズムの要因,精神神経疾患の有無,薬剤・アルコールの要因,心理社会的要因などの問診が基本となる.不眠の持続期間は,治療適応を決めるうえで重要な指標である.不眠を発症する以前の睡眠習慣(何時に眠って何時に起きていたか)を聴取することは,治療のゴールを見定める点で重要である.中途覚醒や早朝覚醒を認める場合は気分障害の可能性もあるので,起床時の気分(おっくう感),食欲や昼間の活動意欲,楽しみについてさらに問診を進める必要がある.Ⅳ 不眠をきたす疾患鑑別すべき睡眠障害としては以下のものが挙げられる.いずれにおいても,不眠の原因となっている疾患の治療が必要であり,ベンゾジアゼピン(benzodiazepine:BZ)受容体作動薬の睡眠薬投与のみでは症状の改善は限定的であり,悪化因子にすらなり得る.1 睡眠時無呼吸症候群成人の3%程度にみられ,睡眠中の激しいいびきと呼吸停止が観察される.起床時の口渇や頭痛などとともに日中の眠気や作業能力の低下,倦怠感を認めるのに加え,熟眠感欠如や中途覚醒などの不眠を伴う.BZ 受容体作動薬の睡眠薬は筋弛緩作用のため無呼吸を悪化させ,症状を増悪させる.治療としては経鼻持続陽圧呼吸(continuous positive airwaypressure:CPAP)(中等度から重症)や歯科装具(軽症)により睡眠中の気道を確保することで症状を改善する.2 レストレスレッグス(むずむず脚)症候群夕方から夜にかけて下肢に異常感覚が生じ,動かさずにはいられなくなり,強い入眠障害や熟眠感欠如,時に日中の眠気やうつ状態も生じる.成人の1~3%にみられ,女性に多く,加齢に伴い有病率が高まるため,この症状の有無を尋ねる必要がある.治療薬は,プラミペキソールやロチゴチンなどのドパミン受容体作動薬やガバペンチン エナカルビルによる異常感覚の抑制が有効である.