カレントテラピー 33-6 サンプル

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76 Current Therapy 2015 Vol.33 No.66121 咳喘息・アトピー咳嗽咳喘息は喘鳴や呼吸困難を伴わない慢性咳嗽だけが症状で,気道過敏性亢進があり,気管支拡張薬が有効な特徴のある喘息の亜型である.主に吸入ステロイド薬(inhaled corticosteroid:ICS),長時間作用型β2刺激薬(long acting β2 agonist:LABA)が用いられている.アトピー咳嗽は,アトピー素因を有する中年女性に多い咽喉等の?痒感を伴う乾性咳嗽で,気管支拡張薬が無効な特徴があり,ヒスタミンH1受容体拮抗薬やステロイドが推奨されている.これらの治療薬にて,改善の不十分な例には漢方治療を積極的に検討していただきたい.漢方治療上,重要な生薬に麻マ黄オウがある.主成分であるエフェドリンはβ受容体刺激作用があり,鎮咳作用,気管支拡張作用を有するが,β受容体選択性に乏しく,動悸,悪心などをきたしやすく,まれに尿閉もあり得る.プソイドエフェドリンには解熱・抗炎症作用もあり,急性感染症にも対応し得る.麻黄のエキスには抗アレルギー作用もある.また,麻黄は桂ケイ皮ヒとともに風邪に対する漢方薬にはほぼ必須の生薬であるが,誰にでも使ってよいわけではない.虚実という漢方医学特有の診断概念の目的のひとつは,麻黄の副作用を予防することにある.脈の緊張のよい実証例は通常量の麻黄を用いることのできる症例であるが,脈の緊張が低下した虚証例には投与を慎重にすべきである.麻黄の適応でない症例もある.とりわけ成人女性発症例のなかにはICS,LABA の効果も不十分なタイプがあり,漢方治療では茯ブク苓リョウ杏キョウ仁ニン甘カン草ゾウ湯トウが有効である.同剤は煎じ薬であり,漢方製剤としては最も近い内容の苓リョウ甘カン姜キョウ味ミ辛シン夏ゲ仁ニン湯トウが用いられるが,難治例では煎じ薬が必要となる場合が多い.1)小青竜湯アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎を有する例の咳嗽によい.若年齢のアトピー素因のある患者だけでなく,高齢の慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructivepulmonary disease:COPD)患者にも有効である.漢方医学的適応としては水滞(水様痰,胃部振水音,浮腫傾向)と寒証(顔色が蒼白傾向,冷えやすい,寒冷が症状を増悪させる)とされている.太陽病,虚実間証.報告:水様の痰,喘鳴,咳嗽のいずれかを有する軽症~中等症の気管支炎患者200 例(小青竜湯群101 例,偽薬群99例)による二重盲検ランダム化比較試験で,小青竜湯は偽薬に比して咳の回数,強さ,喀痰を有意に改善させた1).2)麻マ杏キョウ甘カン石セキ湯トウ喘鳴を伴う咳嗽によい.かつては気管支喘息患者の発作の初期段階に用いられていた.目標は発汗,赤ら顔であり,小青竜湯の寒証に対して,熱証と呼ばれる.咳嗽に対する即効性があるが,汗の出なくなった脱水例は適応ではない.少陽病,実証.3)柴サイ朴ボク湯トウ咽喉違和感を伴うしつこい咳嗽に有用である.小ショウ柴サイ胡コ湯トウと半ハン夏ゲ厚コウ朴ボク湯トウとの合方.かつては小児気管支喘息に対する基本薬とされていた.ステロイド依存性喘息患者に対する臨床効果が封筒法を用いた臨床試験にて明らかにされている2).少陽病,実証.4)苓甘姜味辛夏仁湯構成生薬が小青竜湯に似ているが,麻黄がないところが特徴である.アレルギー性鼻炎を有する例の咳嗽,あるいは小青竜湯にて咳嗽は改善するが,胃部症状などの麻黄の副作用が出現する例に用いる.冷え,浮腫傾向,胃部振水音(お腹をたたくとポチャポチャと音がする)などの水滞を認める.柴朴湯と異なり,呼吸苦を咽喉よりも胸部で自覚する例(胸痺)によく用いる.太陰病,虚証.5)桂ケイ枝シ加カ厚コウ朴ボク杏キョウ仁ニン湯トウ麻杏甘石湯証に似ているが,より虚した例の咳嗽に用いる.自汗傾向があり,のぼせがみられる.使用頻度は低い.太陽病,虚証.6)茯苓杏仁甘草湯(煎じ薬,茯苓10g,杏仁5g,甘草2g)中年発症の女性に用いることが多い.咳が主であるが,息苦しさがあり,咳喘息と診断される.ICSの効果が十分でない症例によい.最も近い内容の漢方製剤である苓甘姜味辛夏仁湯により代用できる場合もある.