カレントテラピー 33-6 サンプル

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8 Current Therapy 2015 Vol.33 No.6544Ⅰ はじめに咳嗽は気道内に侵入した異物や有毒ガスおよび気道内過剰分泌物を排出する重要な生体防御機構のひとつである.しかし気道の咳受容体が病的な状態となると実際の侵入物質がなくても咳が頻発,持続し疲労や不眠で体力の消耗をきたし,時には二次障害を併発する.近年,アレルギー性気道疾患の増加に伴い慢性咳嗽も注目を集めている.これらの疾患と咳嗽発現の基礎的な理解を深めるため,本項では咳の発生メカニズムについて基本的な知識と最近の新知見に分けて紹介する.Ⅱ 咳発現機序の基本的理解咳は意識的あるいは心因性咳嗽を除いて,基本的には気道粘膜にある受容体が刺激を受けることにより発現する.すなわち生体の健康維持のため下気道内への外来異物(ウイルス,細菌,浮遊粉塵,ガスなど)の侵入阻止,あるいは大きな異物では気道を確保して窒息による生命危機を回避するための重要な生体防御機構である.従来,咳は気道における一般の知覚受容器が,その特性に従って働いていると考えられている.咳の誘発物質は以下の3つに大きく分類される(表1)1).①第Ⅰ群:塵芥,炭粉末などの無機物質②第Ⅱ群:酸性またはアルカリ性物質③第Ⅲ群:生理・薬理活性物質* 藤田保健衛生大学耳鼻咽喉科教授慢性咳嗽―しつこい咳に潜む疾患咳の発生メカニズム内藤健晴*最近,肺に明確な病変(結核,肺癌,肺線維症など)がなく,長引く咳の患者が注目を集めている.それらは喘息,咳喘息,アトピー咳嗽,喉頭アレルギー,後鼻漏症候群,胃食道逆流症(gastroesophagealreflux disease:GERD),薬剤誘発性咳嗽,感冒後咳嗽などである.これらの疾患の病態把握のために咳発現のメカニズムを理解することは重要である.咳の基礎として咳誘発物質(第Ⅰ群:塵芥,炭粉末などの無機物質,第Ⅱ群:酸性またはアルカリ性物質,第Ⅲ群:生理・薬理活性物質),それに対応する気道での知覚受容器〔刺激受容器(rapidly adapting receptors:RARs),伸展受容器(slowly adapting receptor),気管支無髄C線維(bronchial C-fiber),肺胞C線維(pulmonary C-fiber)〕について紹介するとともに,最近の新知見(シクロオキシゲナーゼ,アナンダマイドトランスポーターとNO,ATP,テトロドトキシン抵抗性Na+チャネル,TRPA1)についても概説した.