カレントテラピー 33-6 サンプル

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10 Current Therapy 2015 Vol.33 No.6546やブラジキニンなどの炎症性化学伝達物質によって刺激されると側枝からサブスタンスP(substance P:SP)やカルシトニン関連遺伝子ペプチド(calcitoningene-related peptide:CGRP)などの神経ペプチドが逆行性に放出され,神経原性炎症によりAδ神経刺激が起こり咳が出現するメカニズムが考えられている.SP,CGRP,ニューロキニンA(neurokinin A:NKA)などのタキキニンの分解酵素であるニュートラルエンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase:NEP)は気道上皮基底細胞膜上に高濃度に存在し,この経路が咳を抑制する.C -fiber上の咳感受性受容器はカプサイシン受容体であるtransient receptorpotential vanilloid 1(TRPV 1)である.4 肺胞C 線維(pulmonary C-fiber, J-receptor)肺胞壁に分布するこの無髄C線維はirritant receptorとは異なり咳反射抑制に働く.第Ⅰ群の咳誘発物質である塵芥,炭粉末など無機物質や第Ⅱ群のクエン酸はAδ神経を刺激する.第Ⅱ群での強酸はpH 2 . 6以下で,アンモニアなどのアルカリ物質ではpH10以上で咳がでる.酸性物質については咳受容体近傍でのClイオン濃度の低下によるとされている.第Ⅲ群のカプサイシンはC -fiberを刺激して活動電位を発生させるが,一方で活動電位を伴わずにタキキニンの遊離を促進する.また.Tatarら3)は,喉頭入口部の機械刺激では咳を誘発せず,声門腹側,背側では咳を誘発しやすいが,声帯中央部は咳を誘発せず呼吸停止をきたすとしている.このように単に咳といっても刺激物質の種類,対応する受容体の種類,気道の刺激される部位,そのうえ,中枢性鎮咳薬反応性,非反応性の咳があるように,中枢の干渉の有無などその様式はそれぞれに異なり複雑であることを理解しておく必要がある.すなわち咳発現のメカニズムはきわめて複雑であるということである.Ⅲ 最近の新しい咳のメカニズムに関する研究からの理解上述のように基本的な咳の発生メカニズムについて示してきたが,最近,星薬科大学薬学部の亀井らを中心として行われた咳嗽メカニズムの基礎的研究業績から新知見がいくつか示されてきた.それらについて紙面の関係上,簡略に紹介する.1 シクロオキシゲナーゼの関与C -fiber 終末から放出されるタキキニンに関与するメディエーターとして,シクロオキシゲナーゼ(特にCOX2)により生合成されるプロスタグランジン(PGE2やPGE2α)が注目されている.PGE2 やPGE2αはカプサイシン誘発咳反射を増強する4).2 アナンダマイドトランスポーターとNO の関与C -fiber終末から放出されるタキキニンの調節にNOも関与すると考えられている.カプサイシン受容体であるTRPV1の内因物質としてアナンダマイドがあり,C-fiber終末でトランスポーターとして取り込まれたアナンダマイドは細胞の内側へ結合領域をもつTRPV1受容体を介してタキキニン類を放出し,咳を誘発する可能性が示唆されている5).NOはアナンダマイドの細胞内への取り込みを促進することも知られている6).3 ATPおよびヒスタミンによる咳受容体感受性調節ATPは痛み情報伝達に多様に関与している.ATPはクエン酸により誘発した咳回数を増加させ,その拮抗薬であるTNP -ATP(P2Xタイプ受容体拮抗薬)で抑制される7).ヒスタミンはクエン酸誘発咳を増加させその現象はヒスタミンH1レセプター拮抗薬かTNP -ATPで抑制される8).これらのことは喉頭アレルギーやアトピー咳に対する咳への有効性の機序を解明する端緒となりそうな研究結果である.4 テトロドトキシン抵抗性Na+チャネルによる咳受容体感受性調節電位依存性Na+チャネル阻害作用をもつ局所麻酔薬が鎮咳作用をもつことが知られている.電位依存性Na+チャネルのなかでもテトロドトキシン抵抗性Na+チャネルは気道のカプサイシン感受性の神経細胞膜上に発現している.電位依存性Na+チャネルの開口作用をもつフェンバレレートをマウスに吸入させると咳嗽反射が誘発される9).またフェンバレレート吸入はカプサイシン誘発咳嗽を増悪させる9).