カレントテラピー 33-6 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.6 23559Ⅰ はじめにCough variant asthma(本邦では咳喘息と呼ぶ)の疾患概念が米国から提唱されたのは,1970年代のことである1).広範な気道閉塞により惹起される喘鳴が喘息に必須の症状と理解されていた当時,“喘鳴がなく咳のみを症状とする喘息”を意味する本症は一見矛盾した概念であった.しかし,しだいに認知され,近年ではこの名称は内外の喘息治療ガイドラインなどにおいて広く使用されるに至っている.長引く咳を訴えて受診する患者が近年増加している.胸部X線撮影は肺腫瘍や感染症などのスクリーニングに重要な検査であるが,大多数の患者は明らかな異常所見を示さない.呼吸音などの現症にも喘鳴などの有意な所見をしばしば欠く.患者の多くは一般鎮咳薬による治療に抵抗し,長期にわたる咳のために疲弊して生活の質(QOL)が低下するため,その対応は呼吸器内科の専門外来のみならず一般診療の場においても重要な問題となっている.このような状況の下,咳嗽の診療ガイドラインが各国から続々と発表され,日本呼吸器学会からも2005年に「咳嗽に関するガイドライン」の初版,2012年には第2版2)が発表された.各国のガイドラインに共通する定義で,「慢性咳嗽(chronic cough)」とは8週間以上持続し胸部X線や身体所見の異常を伴わない咳嗽を指す2).その原因は多岐にわたるが,本邦では,CVAは副鼻腔気管支症候群(sinobronchial syndrome:SBS),胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)などを凌いで約半数を占める最多の疾患である3),4).またCVA患者の一部では経過中に喘鳴が出現し典型的喘息に移行する.つまりCVAは喘息の初期像あるいは前段階の性格も有するので,その認識は喘息の早期発見の観点からも重要である5).* 名古屋市立大学大学院医学研究科呼吸器・免疫アレルギー内科学教授慢性咳嗽―しつこい咳に潜む疾患咳喘息新実彰男*咳のみを症状とする喘息を意味する咳喘息(cough variant asthma:CVA)は,本邦では8週以上持続し胸部X線や聴診所見の異常を伴わない「狭義の」慢性咳嗽の約半数を占める最多の原因疾患である.喘鳴を伴う典型的喘息と同様に,症状の季節性,夜間から早朝の悪化などの特徴的な病歴がみられ,気道過敏性亢進,好酸球性気道炎症,気道リモデリングといった病態生理学的特徴を有する.気管支拡張薬の有効性が診断の決め手となるが,診断確定後は吸入ステロイド薬を中心に長期治療を行う.喀痰中好酸球増多,呼気中NO濃度上昇は補助診断に有用であるが,低値例もみられるため注意を要する.一部の患者に認められる典型的喘息への移行の頻度は吸入ステロイド治療によって減少する.しばしば合併する胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)の存在に留意する.