カレントテラピー 33-7 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.7 53693Ⅰ はじめに戦後,わが国の医学界は専門医療の推進を図り,数々の技術革新を成し遂げ,診断・治療学の分野に目覚ましい発展を遂げた.その恩恵により,従来は生命の継続すら難しかった疾患の患者の長期生存も可能となった.その一方で,1980年代から,生活の質(QOL)を考慮した医療も必要だというパラダイムシフトが起こり,「キュアのみでなくケアも!」という時代に変遷してきた.そして,2025年問題,いわゆる少子・高齢化社会を目前に控え,医療にもさらなる変革が求められている.高齢者を,住み慣れた街のなかで診る医師(総合医)が圧倒的に不足しているという意見に後押しされ,総合医の育成に対する要求が高まっている.従来,総合医の育成は,地域の一般病院・診療所が主体となってきたが,総合診療の理解と普及のためには,学生の段階から教育し,その必要性を体験しておく必要があり,大学教育のなかに,地域医療を理解し,総合医を育成するプログラムが必要とされる時代となってきた.東京慈恵会医科大学(以下:本学)では,総合診療内科が主体となって,平成25年度から「未来医療研究人材養成拠点形成事業:卒前から生涯学習に亘る総合診療能力開発」において,総合医育成プログラムを展開しているので,本稿では,それを中心に概説する.Ⅱ 一般社団法人日本専門医機構の策定した総合医像について平成25年に日本専門医機構が創設され,同年9月から「総合診療専門医に関する委員会」が発足した.2014年5月に「まとめ」が発行されたため,その抜*1 東京慈恵会医科大学内科学講座総合診療内科講師/東京慈恵会医科大学附属柏病院総合診療部診療部長*2 東京慈恵会医科大学臨床疫学研究部*3 東京慈恵会医科大学内科学講座総合診療内科准教授/東京慈恵会医科大学附属柏病院総合診療部*4 東京慈恵会医科大学内科学講座総合診療内科教授日本の総合医療はどうあるべきか― 新たな総合診療専門医制度の発足を迎えて大学病院における総合診療専門医の育成三浦靖彦*1・松島雅人*2・古谷信之*3・大野岩男*4超高齢化社会を迎えるわが国において,地域で必要な総合診療能力をもつだけでなく,プライマリ・ケア現場での問題を解決することのできる臨床研究能力を併せもつ人材の養成が急務である.そのためには,地域と大学が強く連携し,卒前から卒後・生涯にわたる時間軸のなかで,「幅広い多様性」という総合診療の専門性を基礎に,地域医療で生じた問題を自ら解決するための臨床研究を発案・遂行し,エビデンスを発信できるような医師を養成するプログラムが必要となる.東京慈恵会医科大学では,卒前,臨床研修での「地域医療体験」の拡充,専門修得コースにおける「総合診療コース」の新設,大学院博士課程での授業細目「地域医療プライマリ・ケア医学」の確立,大学院と専門修得コースのコンバインドプログラムを構築し,プライマリ・ケア現場で活躍するclinician researcherを育成する全学的なシステムを開発したので,それを紹介する.