カレントテラピー 33-7 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.7 57総合診療専門医の育成697臨床疫学者と連携することによって地域から良質なエビデンスを発信する土壌が形成される.本学では社会人コースとしてクリニカルリサーチセミナーを平成13年度より継続してきた実績をもとに運営する.7 総合診療・家庭医療ブラッシュアッププログラムの開発現在の総合診療医の養成数のペースでは,急激に高齢化しているわが国の医療需要に対応することは困難である.卒後すぐに総合診療研修を受け専門医を取得していくコースとは別に,すでに診療実績のある臓器別専門医のための総合診療を学ぶコースを提供し,地域医療やプライマリ・ケアへの移行をスムーズにする.臓器別専門医としての特徴を活かしながら,地域での総合診療能力を兼ね備える人材を養成する.8 復職支援スタートアッププログラムの開発もともとモチベーションも高く,優秀な女性医師がその能力を発揮できないことは国家の損失である.このような医師のなかには将来,地域医療に貢献したいという希望をもっている医師も少なくない.2008年1月に「育児・介護支援ワーキンググループ」を立ち上げ,2011年10月に女性医師キャリア支援室を設立し,女性医師の復職支援を行ってきた実績を基に,女性医師キャリア支援室と連携することによって,復帰支援のなかで総合診療を学ぶ「はじめの一歩」のコースを提供し,将来的に地域で活躍する総合診療医を養成する5),6).9 その他プログラムには組み込まれていないが,本学附属第三病院および柏病院における緩和ケアチームの運営は,総合診療部のメンバーが担当しており,がん患者だけでなく,非がん患者に対しても診断後早期からの積極的な緩和ケアの提供体制を構築している.また,柏病院では,臨床倫理委員会,臨床倫理コンサルテーションチーム,患者支援・地域連携センター業務,学生教育,研修医教育の部署においても,総合診療部が深く関与している.現在までの大学教育,卒後の専門分野の教育では,重視されていなかった,multi -morbidity,frailty,complex case,chaotic caseへの対応や,多職種連携,地域連携にも対応できる人材を育成する体制が整っており,今後の少子・高齢・多死社会において地域で活躍できる人材が育ってくれるものと思われる.Ⅳ おわりに以上述べてきたように,総合診療の多様性,地域密着性などの特殊性ゆえに,大学病院単独では,教えることのできない分野があることは明らかで,総合医の育成において,大学病院は後塵を拝してきた経緯がある.しかし,その部分を理解したうえで,その弱点をカバーできるプログラムを構築し,さらに,大学病院であるからこそ学び得るものを盛り込むことにより,魅力あるプログラムを構築することが可能となった.このプログラムを通して,本学の建学の精神である「病気を診ずして病人を診よ」を現代のニーズにフィットした形で体現できる医師が育ってくれることを願っている.参考文献1)総合診療専門医に関する委員会のまとめ.2014(http://www.japan-senmon-i.jp/document/140731.pdf 2015年4月1日アクセス)2)一般社団法人日本専門医機構:総合診療専門医研修プログラム整備基準について.平成26年度第2回社員総会議事次第3)東京慈恵会医科大学:未来医療研究人材養成拠点形成事業 卒前から生涯学習に亘る総合診療能力開発(http://www.jikei.ac.jp/soushingp/index.html 2015年4月1日アクセス)4)松島雅人:平成19年度文部科学省「社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」(医療人GP)の紹介─東京慈恵会医科大学「プライマリケア現場の臨床研究者の育成」プログラム─:─東京慈恵会医科大学「プライマリケア現場の臨床研究者の育成」プログラム─.臨床薬理 39:191-193, 20085)川瀬和美:大学病院における女性医師の労働環境改善への提言.日臨外会誌:7:1121-1125, 20106)川瀬和美,永田知映,櫻井結華ほか:大学病院常勤女性医師のキャリアおよび女性医師支援に対する意識について:東京慈恵会医科大学常勤女性医師アンケート結果から.慈恵医大誌 128:135-141, 2013