カレントテラピー 33-7 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.7 67707Ⅰ はじめに英国では,国民全員が自分の家庭医を登録し,「ゆりかごから墓場まで」患者の医療問題の解決に携わってもらうシステム(National Health Service:NHS)が1950年代より確立されている.そして,その中心的役割を果たすのが家庭医(General Practitioner:GP)であり,このGPの行う医療を,家庭医療(GeneralPractice)とここでは訳するようにする.これまで日本でも1980年代ごろより,大学病院に総合内科が設立されるようになり,家庭医療や総合診療という概念が,根強く議論されてきた.そして,ここにきて,日本プライマリ・ケア連合学会の設立や,新しい総合診療専門医制度の発足を迎えて,まさにこれまで日本医師会が中心となって行ってきた,開業医の育成・教育の部分を,国・医師会・学会・大学病院等が力を合わせて構築する環境が整ってきたといえよう.本稿では,現在も進化し続ける英国のGPの専門医制度を参考にしながら,自身の英国留学の経験とGPからの情報を基に,その特徴と参考になるポイントを述べていきたい.Ⅱ 英国の家庭医療専門医制度と歴史的背景英国では家庭医療(General Practice)と総合内科(General Medicine)は明確に区別されている.家庭医療は診療所を主体に一次医療を,総合内科は病院を主体に二次医療を担当しており,その専門医教育・認定制度もまた,異なったものになる.このことは,総合診療専門医というものを日本の国民に認知していただくためには,重要なポイントのひとつであると考える.なぜなら,これまでも日本のプライマリ・ケアにおいてはこの家庭医療と総合内科の定義について色々と論じられてきたと思うが,実際には,家庭医療という専門分野は日本ではひとつの診療科とし* GPクリニック自由が丘院長日本の総合医療はどうあるべきか― 新たな総合診療専門医制度の発足を迎えて英国のGeneral Practitioner斉藤康洋*新しい総合診療専門医制度が,いよいよ導入されることになった.これまで,数多くの議論を経て総合診療専門医の定義・特徴・期待される役割などが徐々に明確になってくると同時に,今後はその専門医をどのように育成し,どのように評価していくかの議論が活発になっていくであろう.英国の家庭医と日本の総合内科専門医に求められる専門性を比較してみると,かなりの部分が共通していることに気づかされる.歴史や他国に学べではないが,英国の家庭医療専門医制度は,その組織の設立過程,専門医試験の改革とその目指す方向性,研修医や研修プログラムの評価の方法,そして指導医の育成の点で参考になると思われる.