カレントテラピー 33-7 サンプル

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70 Current Therapy 2015 Vol.33 No.7710特に,これらの特性を実行していくうえで必要とされる,患者を主体にしたコミュニケーション能力というのは,家庭医にかかわらず,すべての医師がもつべき資質であるのと同時に,ただ単に日々の臨床を実践していくだけで確実に身に付くとは限らない素養であるため,家庭医,あるいは総合診療専門医を育てていくうえでは,その技能を磨くための特別な訓練が必要になってくるであろう.また,総合診療専門医に必要とされるこれら5つの特性を習得するためには,臓器別専門各科を主体にしたカリキュラムを履修するだけでは困難である.特に,地域の医療チームの一員としてのマネジメント能力や,個や家族のさまざまな問題に対応する全人的・包括的なアプローチ等の経験を積むためには,病院ではなく,診療所を基盤にした新たな後期研修プログラムを構築していく必要があると考える.Ⅳ 英国家庭医療専門医試験の特徴英国と日本の家庭医療専門医試験の大きな違いは,英国の試験が形成的評価を取り入れている点であろう.形成的評価とは,時間軸と並行して継続的に行う評価のことで,一般的に用いられる1回の試験で断続的に評価する総括的評価と相対する関係にある.図4の日英専門医試験の比較を基に比べてみると,知識面や技能面に関しては,若干の試験形式の違いはあるものの,英国ではApplied Knowledge Test(AKT)やClinical Skills Assessment(CSA)を用いて総括的に評価するような構成になっている.一方,習得した知識や技能を行動に移す部分の評価ということになると,英国のMRCGPではより継続した細やかな評価技法として,形成的評価を用いている3).その形成的評価の例としての職場基盤評価(WorkplaceBased Assessment:WPBA)についてみてみると,WPBAでは,6つの手法を用いて,これまで主観的な評価にならざるを得なかった,行動面に関する評価を,3年間のプログラム期間を通して可能な限り客観的に行えるようにしている(表).その評価は単に指導医が行うだけでなく,診療所のコメディカルスタッフや患者からも行われる.また,その評価内容も,細かく項目や基準が定められており,評価者は一定の形式にのっとって評価を行っていく.例えば,多職種や患者からの評価は,定期的にアンケートなどが行われ,ePortfolio(電子ポートフォリオ)という媒体を用いて,継時的に記録されていく.それを,指導医とともに,時には自分自身でも振り返りながら,次の行動目標を立てることが,診察室のパソコン上でも可能となっている.このePortfolioの中身に関する詳細は英国家庭医学会(RCGP)のホームページで確認可能である4).また,WPBAにおけるePortfolioの審査には研修・3年間継続して評価・ePortfolio・形成的評価・ポートフォリオ20例・総括的評価WPBA 行動・模擬診察10分×13回・コミュニケーション+診察・総括的評価・模擬診察12分×8回・コミュニケーション+診察・総括的評価CSA 技能・コンピュータ:選択式・3時間:200問・総括的評価・記述試験・更新:単位取得・総括的評価AKT 知識MRCGP 家庭医療専門医図4日英専門医試験の比較