カレントテラピー 33-7 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.7 71海外の総合医・家庭医の現状711プログラム責任者1名,指導医,一般人からなる委員会で行われていることも特徴である5).この審査を通して,一定以上の評価をePortfolio上で示せない場合には次の年次には進めないようになっているため,研修医にとってはこのePortfolioの存在は大きな意味をもっている.そして,GPになってからも,パソコンがあれば簡単にアクセスできるため,前向きに生涯教育のツールとしても活用できる.私見ではあるが,このように患者や多職種スタッフ,そして一般人をも評価者となり得る基盤には,英国がNHSという医療制度をとっており,GPはそのNHSに雇われている医師であるという背景があるのかもしれない.つまり,彼らは,自分たちの支払っている税金や保険料を元に雇用されている医師でもあるため,自分たちがしっかりと評価していく必要があるという意識が,日本に比べて潜在的に強いのかもしれない.また,このePortfolioにも,莫大な予算を投じて導入・普及に努めることができるという側面も,NHSの強みかもしれない.Ⅴ 指導医(GP trainer)の育成英国の家庭医療の強みは,その指導者の育成に力を注いでいることにもある.例えば,家庭医療専門プログラムの研修医は,病院研修中にはローテーション先での病院指導医(Clinical Supervisor)から,診療所研修中には指導医としてのトレーニングを受けたGP trainerからの指導を受けることになる.そして,さらにそれぞれの指導医とは別に教育監督者(Educational Supervisor)がつき,後期研修期間の最初から最後まで一対一のサポート体制が敷かれることになる.また,診療所研修期間中には,GP trainerとの個別指導セッションが週2回義務づけられており,その内容に関しては,日頃の臨床上における疑問のディスカッションにとどまらず,診療所内でのスタッフとのコミュニケーションや医師としてのあり方,時にはプライベートな問題にまで及び,指導医から,その人間性まで鍛えられるようである.これらの指導医の育成に関しては,英国各地域に21カ所あるDeaneryが地域単位でその役割を担っており,学会や地域にある大学のプライマリ・ケア学科などとも協力して,指導医研修プログラムや,定期的な指導医同士のミーティングなどさまざまな取り組みを行っている.また,このGP trainerになるための条件としては,家庭医として優れていること=学会認定専門医をもっていること,教育者として優れていること=医学教育資格課程(大学の課程を履修する)が必要であり,さらに指導医のいる診療所は,家庭医教育にふさわしいかどうかの施設評価をDeaneryから受ける必要がある6).筆者が英国留学中に,GP trainerの研修会を見学MSF PSQ COT CBDMini-CEXCSR1.コミュニケーション・医療面接○ ○ ○ ○ ○2.全人的な診療○ ○ ○ ○3.データ収集と解釈○ ○ ○ ○ ○4.診断と意思決定○ ○ ○ ○ ○5.臨床マネージメント○ ○ ○ ○ ○6.複雑な健康問題の管理○ ○ ○7.プライマリケア運営・情報管理・情報技術○8.同僚との仕事,チームでの仕事○ ○ ○9.地域指向○ ○10.診療の質,学習,教育の維持○ ○ ○11.診療における倫理的なアプローチの維持○ ○ ○12.診療のための健康の維持○ ○ ○表Workplace Based Assessment(WPBA)の評価方法と項目MSF:Multi-source Feedback(多元フィードバック),PSQ:PatientSatisfaction Questionnaire(患者満足度調査),COT:ConsultationObservation Tool(ビデオ評価), CBD:Case-Based Discussion(症例ディスカッション),Mini -CEX:Clinical Evaluation Exercise(臨床技能評価),CSR:Clinical Super -visor’s Report(指導医の評価)〔参考文献3)より引用改変〕