カレントテラピー 33-7 サンプル

カレントテラピー 33-7 サンプル page 24/28

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 33-7 サンプル の電子ブックに掲載されている24ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 33-7 サンプル

72 Current Therapy 2015 Vol.33 No.7712させていただく機会を得たが,指導医同士が自分たちの指導風景をビデオ録画し,それをお互いに供覧しながら,その指導方法や内容に関して真剣にディスカッションしている姿を見て,非常に感銘を受けたのを今も覚えている.このGP trainerの役割は「研修医に一方的に教えること」ではなく,「研修医の学びを効果的に支援する」という姿勢が徹底されており,指導医自身も,この教育を通して常に研鑽し,指導医としての成長を目指していることが英国のGeneralPracticeの礎となっていると思われる.Ⅵ 英国から学ぶ日本の総合診療専門医制度ここまでの記述を基に,日本が参考にすべき,英国の家庭医療専門医制度の特徴をまとめてみると,以下のようになる.1. 従来,学会主体で運営されていた専門医制度を,学会・医師会・国が連携体制を構築しながら第三者機関を中心として運営することで,これまで各組織間の利害関係により,ややもすると膠着状態であった制度の構造に新しい変革が可能となっている7).2. 患者を主体にしたコミュニケーション能力を重視し,その能力を養うカリキュラムを構築している.3. ICT(ePortfolio)を活用した評価制度を用い,研修医の質の管理を徹底している.4. 家庭医専門医試験の評価に,従来の総括的評価だけでなく,指導医・患者・多職種職員・学会等を通じた経時的・多面的な形成的評価を行うことで,習得した知識・技能をさらに行動にまで移せているかどうかの評価を可能にしている.5. 指導医の育成や質の確保にも力を入れており,研修プログラムの質の管理も,地域ごとの組織(Deanery)で厳密に行われている.Ⅶ おわりに今回,英国のGPの専門医制度を基に,今後日本で普及していく,新たな総合診療専門医制度の目指すべき方向について考察した.歴史的に振り返ると,日本の医学教育は「医学という学問」を大学や病院で学ぶことが主体であった.しかし,これからの日本のプライマリ・ケアには,まさに新しい専門医制度の総合診療専門医が目指すような「地域を診る」視点が大切であり,それを学ぶ場所は当然「地域」である必要があるだろう.また,その育成には,単なる見学レベルの実習では不十分であり,実際に診療所の診療に一定期間携わる「参加型」のカリキュラムが必要となろう.そのためには,より効果的な専門医制度の構築や研修プログラムの質の管理,そして指導医の育成は,今後の総合診療専門医の質を大きく左右する課題であると思われる.そのためにも,今後の日本の新しい総合診療専門医制度の発展には,英国の家庭医療専門医制度の歴史的変遷やその内容が,大いに参考になると思われる.参考文献1)Mortimer B:The nMRCGP handbook. 2nd ed, Quay Books, adivision of Mark Allen Publishing Ltd, 2008, 172p2)Being a General Practitioner(http://www.rcgp.org.uk/gptraining-and-exams/gp-curriculum-overview.aspx)(2015年4月22日確認)3)澤 憲明,田中啓広,菅家智史ほか:英国家庭医学会の新しい専門医教育・認定制度から見える日本の課題.日プライマリケア連会誌 34:1-9, 20114)http://www.rcgp.org.uk/gp -training -and -exams/mrcgp -trainee-eportfolio.aspx(2015年4月22日確認)5)澤 憲明:これからの日本の医療制度と家庭医療―第4章 英国の医学教育と家庭医の育て方―.社保旬報 2497:32-40, 20126)澤 憲明:これからの日本の医療制度と家庭医療―第5章 日本の家庭医療―.社保旬報 2500:32-40, 20127)Roger Neighbour:インタビュー 家庭医が国によって認められている英国の医療制度.地域医学 20:196-203, 2006