カレントテラピー 33-7 サンプル

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10 Current Therapy 2015 Vol.33 No.7650前述したように,我が国は例をみない少子高齢化社会を迎えている.もちろん他の先進国においても同様の問題を抱えているのだが,我が国は世界一の長寿国であることからその対策を早急に立てなくてはならない.先に述べたように高齢者はひとりで複数の疾患を抱えていることが多く,癌の発症も多い(我が国では2人に1人が癌になるといわれている).また,認知機能の低下をはじめとして種々の精神神経疾患への対応も喫緊の課題である.その結果として,一人当たりの医療費を比べてみると65歳以下では163,400円であるのに対して,65歳以上の高齢者は平均646,100円であり,高齢者には多くの医療費がかかっている.複数の疾患を抱える高齢者の診療にあたって,これまでのように個々の疾患をそれぞれの専門医が担当するという診療体制で望むのは効率的ではなく,また患者さんにとっての負担も大きい.さらに,それぞれの地域にすべての専門医が配置されているわけではないことからそのような診療体制は一層の地域格差を生むことになる.これらの状況を考えたときのひとつの解決策として「日常遭遇する疾患や傷害の治療・予防,保健・福祉など幅広い問題について適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的に提供でき,地域のニーズに対応できる「地域の診療にあたる医師」,領域別専門医が「深さ」が特徴であるのに対し,「扱う問題の広さと多様性」を特徴とする医師,他の領域別専門医や他職種と連携して,地域の医療・介護・保健等のさまざまな分野においてリーダーシップを発揮しつつ,多様な医療サービス(在宅医療,緩和ケア,高齢者ケア等)を包括的かつ柔軟に提供でき,地域全体の健康向上に貢献する重要な役割を担える医師」という医師像をもつ「総合診療専門医」を養成する必要があり,この度の専門医制度改革の大きな柱のひとつとして新設したのである.新しい専門医であり,この養成には,まさにオールジャパンで取り組む必要があり,学会を超え,日本医師会などを含めた関連医療団体とも連携を取りつつ作業を進める必要がある.幸い新設される「総合診療専門医」を希望する若い医師も増えつつあるとの声も聞こえる.それらの医師の期待に応え,やり甲斐と誇りを持てる専門医像の確立に向け,日本専門医機構として全力で取り組みたい.そして「総合診療専門医」の新設により,高齢化社会を迎える我が国の医療体制が一層充実することを強く望んでいる.参考文献1)厚生労働省:専門医の在り方に関する検討会報告書(平成25年4月22日)(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000300ju.html)