カレントテラピー 34-2 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.2 11心房細動アブレーションのフロントライン1151 予後の改善効果心房細動は従来直ちに生命には影響しないという理由で良性疾患に分類されてきた.確かに慢性の心房細動を有したままで長寿を全うするケースも多く見られるが,一方で脳梗塞や心不全などで生命の危機に瀕する患者がいることも事実である.実際のところ心房細動を根治させることが患者の予後を改善させることにつながるのかどうか,ということはこれまで明らかにはなっていなかったが,近年この疑問に答える論文の発表が相次いでいる.図に示すように,心房細動に対して薬物治療で経過を見た群と,カテーテルアブレーションを施行した群を比較した場合には,患者の予後に有意差が生じる6).3年間の致死率の比較では,カテーテルアブレーション施行群では非心房細動群(対照群)と同等またはそれ以上の予後が得られており,根治的アブレーション手術を施行する意味が明らかになってきている.2 痴呆の改善効果心房細動患者は,明らかな脳梗塞を発生しなくても,微細な脳梗塞を発生することによって少しずつ痴呆を発症してゆくことが指摘されている.心房細動をカテーテルアブレーションで根治させることは痴呆の発生を有意に抑制することが報告されており6),生命予後以外の患者のQOLの向上効果として注目されている.3 心不全の改善効果心不全を合併した心房細動症例において,薬剤によるリズムコントロールはレートコントロールと比して有意なメリットがないことはすでに知られている7).一方で同様のケースにカテーテルアブレーションを用いたリズムコントロールを行った場合には,心機能・症状およびQOLの改善効果が得られることが次々に報告されている.2014年に発表されたCAMTAF Trialではランダム化試験の結果,アブレーション施行群では薬物治療群と比較してNYHA分類やBNP値の有意な改善が得られたことが報告されている8).以上のような新しいエビデンスが次々に明らかとなるにつれて,心房細動は必ずしも良性の疾患とは言えないことがわかってきている.心房細動を根治させるためのカテーテルアブレーション手術は一部の特殊症例に対する治療ではなく,もっと多くの症例に適応されて然るべきなのではないか,というのが新しい心房細動治療の考え方である.Ⅶ 今後のガイドラインの方向性本稿では,現在の心房細動カテーテルアブレーションのガイドラインの内容を紹介するとともに,それが現場でのニーズと治療実情に必ずしも沿っていない点を問題提起した.すでに現場での治療実態はガイドラインを越えており,この状況で事故が生じた場合にはガイドラインに沿わない治療をしたということで医療者が責めを負うことも危惧される.ガイドラインが実臨床に追いついて欲しいという意見が現場で多年間イベント発生率脳卒中死亡脳卒中または死亡薬物治療*p<0.0001***アブレーション対照群9876543210図治療方針による心房細動患者の予後の比較薬物治療群と比較して,カテーテルアブレーション群では脳卒中および死亡率ともに有意差をもって低率であった.〔参考文献6)より引用〕