カレントテラピー 34-3 サンプル

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46 Current Therapy 2016 Vol.34 No.3252Ⅰ はじめに認知症のなかで最も多いアルツハイマー病(Alzheimer’sdisease:AD)については,世界で多くの研究プロジェクトが進行しており,その研究成果が注目されている.この背景には,認知症患者の増加に対する危機感がある.2015年の世界の認知症患者数は,約4,680万人で,2050年には約1億3,200万人と現在の3倍になると予想されている(World AlzheimerReport 2015).わが国では,2013年の厚生労働省の調査で認知症有病率は15%と推定され,認知症有病者数は462万人,その前段階にある予備群の全国有病率推定値は13%,有病者数は400万人である1).米国では,AD患者数は520 万人,これが2050 年には3 倍の約1,600万人になると予想されている2).高齢者人口(2011年)は2,980万人で,総人口に占める割合は23%である.10年後には高齢者人口は3,500万人,30%になり,さらに2060年には,全人口の40%が高齢者で,総人口が8,674万人に減少するといわれている(総務省).このように,わが国は世界で類をみない速さで少子高齢化が進んでおり,認知症は患者本人ばかりでなく,家族や介護にかかわるすべての人の問題であり,社会コストとしても認知症予防はさけて通れない課題となっている.このような背景の下,2014年に日本で「新しいケアと予防のモデル」をテーマにG8 Dementia Summitが開催された.認知症は本当に予防できるのか.最近多くの研究で,病態の進行の早い段階で適切な介入を行えば認知症は予防できるといわれている.では,予防が可能* 株式会社MCBI代表取締役・基礎研究所長認知症の早期発見と予防・治療─ 認知症500万人時代に求められるもの血液を用いたMCIスクリーニング検査の実際内田和彦*最近,認知症の予備群である軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)が注目されている.MCIは,治療的介入をせずにそのまま放置しておくと4年後に約40%がアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)などの認知症を発症するといわれている.MCIの段階で治療的介入を行うことで,認知機能の改善がみられることから,MCIの早期発見と介入によって認知症予防が期待できる.認知症の60~80%を占めるADは,加齢に伴うアミロイドβペプチド(amyloidβ:Aβ)の脳内蓄積とその過程で起こるAβによるシナプス毒性が主たる要因のひとつと考えられている.Aβの脳からの排出とシナプス毒性防御にかかわるタンパク質はAβシークエスタータンパク質と呼ばれ,アポリポタンパク質,補体系タンパク質,トランスサイレチンなどがある.本稿で紹介するMCIスクリーニング検査は,これらのシークエスタータンパク質のうち,apoA1,TTR,非活性型C3の血中レベルを測定することで,MCIのリスクを示すもので,今後の認知症予防の有用なツールと考えられる.