カレントテラピー 34-3 サンプル

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カレントテラピー 34-3 サンプル

Current Therapy 2016 Vol.34 No.3 49最新医療255Aβペプチドと結合してその凝集や毒性を防ぐ.apoEタンパク質は299アミノ酸残基の糖タンパク質で,その遺伝子型がADの発症リスクと関係している6).ε2,ε3, ε4の3つのアイソフォームがあり(APOE 2,APOE 3, APO E4),ε4アレルをもたないものと比較してε4アレルを1つもつものは,ADの発症のリスクが2~3倍,ε4アレルを2つもつものは発症のリスクが12倍といわれている.ADのリスクに対するapoEアイソフォームの主な効果は,Aβ凝集および排除における違いと考えられている.ApoE は肝臓と脳で発現が高く,脳ではアストロサイトとミクログリアに認められる.ApoEはリポタンパク質のエンドサイトーシスのリガンドとして機能している.アストロサイトとミクログリアで産生されたapoEは,アイソフォームに依存してすなわちE2>E3>E 4のようにAβと結合し,受容体を介してエンドサイトーシスされる.さらに脳血流関門を介した血流への移行に関与する.CSFや血液におけるapoEのレベルは,ADと健常人の間で有意な違いはないが,われわれも検討でも血液中のapoEはε4アレルに依存して低下することがわかっている.ApoA1は,血液中ではHDLの構成成分として細胞から肝臓へのコレステロールの輸送に働いている.apoA1はHDLとは独立して心血管疾患のリスクを下げるといわれている.また抗炎症作用と抗酸化作用によって血管障害を防ぐといわれている.ADではapoA1は脳組織とCSFでAβならびにアミロイド前駆体タンパク質と結合しており,Aβの凝集とAβによる毒性を抑制することが示されている7),8).臨床サンプルを用いた研究でADではapoA1の血漿レベルが低下していること,疫学研究によりapoA1はAD発症のリスクを下げることが明らかになっている.ADなど神経変性疾患は脳における炎症がその発症に関与しているといわれている.補体は20以上のタンパク質からなり,主に肝臓で産生され,自然免疫においてマクロファージによる異物の排除に必要なタンパク質である.補体タンパク質は通常は非活性化された血漿タンパク質である.補体の活性化に3つの経路があるが,いずれの経路でも最も量の多い補体タンパク質であるC3の分解が起こり,C3aとC3bに分解される.C3bは貪食細胞のレセプターCR1と結合することによりオプソニンとして作用する.中枢神経系でも補体が産生され,補体系の活性化に必要なコンポーネントも備わっている.補体は脳組織においてもマイクログリアやアストロサイトによるエンドサイトーシスに重要であり,Aβオリゴマーは補体の働きに依存した貪食作用によって排除される9).この過程には補体C3,C4の活性化が必要といわれている10),11).トランスサイレチン(transthyretin:TTR)はプレアルブミンとも呼ばれ,ホモ4量体の64kDaのタンパク質で主に肝臓と脈絡叢で産生されている.血液中のTTRは低栄養や肝硬変などで低下することから,臨床検査では栄養状態の評価に使われている.TTRは以前からADのバイオマーカーとしても注目されてAβ蓄積シナプス障害認知障害(臨床症状)Preclinical AD MCIYearsアルツハイマー型認知症Biomarkers levels(%)NDC1000C3 ApoA1 TTR図3ADの病期進行とAβシークエスタータンパク質の変化ADの最大のリスクは加齢であり,加齢とともにAβの脳内蓄積,シナプス損傷が起こり,さらに脳萎縮,認知機能低下へと進む.その程度によって,年相応の認知機能の低下,ないしは病的な脳の老化すなわち認知症となる.Aβシークエスタータンパク質は加齢とともにその血中濃度が低下する傾向が見られるが,MCIや認知症に至った症例においては,その低下が顕著である.縦断研究の結果から,病期の進行とともに非活性型C3, apoA1, TTRの順に低下すると考えている.中央にある3つの縦ラインは,プレクリニカル期から早期MCIでは非活性型C3,apoA1の変化が,MCIから早期ADではapoA1, TTRの変化がより有意に見られることを示す.