カレントテラピー 34-3 サンプル

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84 Current Therapy 2016 Vol.34 No.3290リンエステラーゼ阻害薬間での変更に関しては作用機序が同様なことから,効果が減弱したからとの理由で別の薬剤に変更することでさらなる臨床効果が発現するとの保証はない.むしろ変更したことで認知症症状がより悪化をする可能性も考えられる.認知症症状の悪化に際してコリンエステラーゼ阻害薬にメマンチンを併用する選択肢は妥当といえるが,コリンエステラーゼ阻害薬間での変更にはより慎重な対策が求められる.本稿の趣旨から離れるが,抗認知症薬の効果を期待できなくなった事例では,薬剤の変更よりも介護を中心とした非薬物療法をより強力に進めていったほうがよいと筆者は考えている.Ⅷ 服薬管理をどう考えるかアルツハイマー型認知症は,記憶障害が主体となる疾患である.服薬したことを忘れ再度服薬するあるいは服薬自体を忘れることが少なくない.抗認知症薬を含めた薬剤管理を誰が行うかが重要な問題となる.軽度の段階ならば患者さんだけで服薬管理ができるだろうと周囲は考えがちである.図4は,筆者の外来で診断した初診アルツハイマー型認知症患者さんの日常生活動作(ADL)の自立度を示したものである.アルツハイマー型認知症では,歩行障害は末期に至らないと出現しない.図中の「移動」の項目をみると,Mini-Mental State Examination(MMSE)で評価した軽微から高度に至るいずれの病期でも移動はほぼ自立している.一方,「服薬」をみると,軽微ならびに軽度の段階ですでに半数前後しか自立できていない.つまり,アルツハイマー型認知症が軽微あるいは軽度の段階でも半数は自分一人で服薬の管理ができていないのである.アルツハイマー型認知症と診断した時点で服薬管理に家族や周囲の人々が関わるように指導することが必要である.Ⅸ 抗認知症薬の長期使用に際しての注意点ドネペジル以外の抗認知症薬が上市されて5年近くを経ているが,抗認知症薬を長期に使用する際の注意点を述べておきたい.ドネペジルは,抗認知症薬のなかで徐脈や洞不全症候群,心ブロックなどを生じる可能性が高い印象を筆者はもっている.ドネペジルを長期使用している患者さんでめまいやふらつき,一過性意識消失がみられる際には,一度心電図検査を行ったほうがよい.リバスチグミンの最大の問題点は貼付部位にみられる皮膚症状(紅斑やかゆみ)である.貼付当初は皮膚症状が全くみられない患者さんのなかでごく少数であるが,1年以上の貼付を経て皮膚症状が出現してくる事例を経験する.常に皮膚症状の出現する可能性活発な周辺症状の目立つアルツハイマー型認知症メマンチンを選択効果あり治療薬継続コリンエステラーゼ阻害薬を併用効果なし他の抑制効果をもつ薬剤の追加他の抑制効果をもつ薬剤のどれか効果あり治療薬継続コリンエステラーゼ阻害薬のいずれかを選択経過をみて抑制効果をもつ薬剤の減量・中止効果なしより効果の強い薬剤に変更図3活発な周辺症状の目立つアルツハイマー型認知症(初診)