カレントテラピー 34-3 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.3 7213認知症の早期発見と予防・治療― 認知症500万人時代に求められるもの―平成28年1月の時点では,認知症患者数は500万人を,その予備軍である軽度認知障害の人の数も450万人超と予想される.この数字ではピンと来なくても,両者を併せた数字は65歳以上人口の3割だと言われると,誰もがその多さを実感されることだろう.わが国の認知症者の8割は80歳以上であり,その8割は女性である.最近では,男性の平均寿命は80歳,女性は87歳とされるから,平均寿命に達した頃には,特に女性だと5割程度の確率で認知症になる.つまり他の病気とは異なり,ある程度長生きすれば,誰しも認知症には罹患すると思ったほうがいいのかもしれない.ここが本タイトルの所以である.今日のわが国では,男女とも50歳になる頃から自分の親の認知症を心配し始める,それから10余年もすると自分のそれを心配して備えを考え始めるのかもしれない.そこで30年くらい前から,さまざまな認知症予防法が報告されるようになり,今日ではマスコミに認知症や認知症予防が扱われない日はない.ところが20年以上にわたって新たな認知症治療薬は登場しないし,喧伝される予防法もその多くは頼りないと言わざるを得ない.そこで今のところ,care today, cure tomorrowと言われて,医療以上に介護が重視されると思われる.さて,久しぶりに認知症特集となった本号だが,普段の本誌とは趣が異なる.ここではAlzheimer病を中心とする認知症医学のトピックスはもとより,当事者である患者とその家族の思いや認知症への姿勢などが扱われている.専門医ではない医師の多くが,認知症医療はなじみが薄く難しいという印象をお持ちかもしれない.診断手法や技術もさることながら,何らかの臓器の異常への対応ではなく,患者の全生活から家族全体の生活のあり方まで考慮することが求められかねないことも大きな原因であろう.本号では家族介護経験者や長年にわたって認知症専門のマスコミ人,また家族の認知症を経験された医師も執筆,登場されている.こうした記事には,日々の臨床実践において肝に銘じなくてはならない意見や思いがある.言うまでもなく,認知症医学と医療に関する原稿も最新の情報を扱った佳作揃いである.監修者として,これらが「自分ごととしての認知症」を扱った記事と調和して,読者諸氏の今日からの認知症医療・ケアに役立てることを願っている.自分ごととしての認知症企画東京医科歯科大学脳統合機能研究センター認知症研究部門特任教授朝田 隆