カレントテラピー 34-3 サンプル

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8 Current Therapy 2016 Vol.34 No.3214Ⅰ はじめにわが国は4人に1人が65歳以上の高齢者という超高齢社会をむかえ,高齢人口の増加とともに認知症高齢者の数が急増している.厚生労働省が実施した認知症の全国調査では,2012年時点での65歳以上における認知症の患者数は約462万人と推計された.その数は今後さらに増加し,2025年には約700万人に達すると見込まれている.認知症の原因はさまざまであるが,最も頻度の高い病型であるアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)の根本的な治療法は未だ確立されていないのが現状である.したがって,認知症の社会的負担を軽減するためには,前向き追跡研究(コホート研究)を主体とした疫学研究によって認知症の実態を把握し,ライフスタイルのなかに存在する危険因子・防御因子を明らかにする必要がある.福岡県久山町では,50年以上にわたり精度の高い生活習慣病の疫学調査(久山町研究)が行われている.本稿では,その一環として行われている認知症のコホート研究の成績を中心に,ライフスタイルが認知症に与える影響について検討する.Ⅱ 喫煙1990年代の前半までの症例対照研究より,喫煙は認知症に対して予防的に働くことが報告されていた.しかし,1990年代後半から老年期の喫煙は認知症,特にAD発症の危険因子であると報告する欧米のコホート研究が散見されるようになった.一方,中年期の喫煙が老年期の認知症発症に与える影響について*1 九州大学大学院医学研究院精神病態医学講師*2 九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター教授認知症の早期発見と予防・治療─ 認知症500万人時代に求められるものライフスタイルと認知症小原知之*1・二宮利治*2最近の疫学研究により,ライフスタイルと認知症の間に密接な関連があることが明らかになりつつある.福岡県久山町の認知症の追跡調査では,中年期から老年期までの持続喫煙はアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)や血管性認知症(vascular dementia:VaD)発症の有意な危険因子であった.海外の追跡研究を集めたメタ解析では,少量から中等量のアルコール摂取はADおよびVaDの発症リスクを20~30%有意に減少させたが,多量のアルコール摂取にはその予防効果が認められなかった.久山町研究を含めたメタ解析では,運動はADおよびVaD発症の有意な防御因子だった.また,久山町の追跡調査では,野菜が豊富な和食に牛乳・乳製品を加える食事パターンと認知症発症の間に有意な負の関連が認められた.睡眠と認知症の関連に関しては,老年期および中年期の睡眠障害や過度の昼寝は認知症,特にAD発症の有意な危険因子であるという報告がわずかに存在する.