カレントテラピー 34-3 サンプル

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12 Current Therapy 2016 Vol.34 No.3218取量を減らして他の食品(おかず)の量を増やす食事パターンが抽出されたものと考えられる.一方,増やすとよいとなった食品群と認知症発症の関係を検討すると,牛乳・乳製品のみが認知症発症と有意に関連しており,牛乳・乳製品の摂取量の増加に伴いADおよびVaDの発症リスクは有意に低下した(図5)8).牛乳・乳製品には,認知症の発症との関連が指摘されている血漿ホモシステインを低下させる作用があるビタミンB12やインスリン抵抗性を改善する作用のあるホエイ蛋白だけでなく,認知症の発症リスクを低下させるミネラル(カルシウムやマグネシウム)も含まれている.また,地中海式食事法では,牛乳・乳製品の摂取を軽度から中等度に抑えるよう推奨しているが,日本人の牛乳・乳製品の摂取量は未だ欧米人の半分以下と大きく下回っているため,日本人においては牛乳・乳製品の摂取が望ましいという結果になったものと思われる.以上より,主食(米)に偏らない,野菜が豊富な日本食に牛乳・乳製品を加えた食事を心がけることが認知症のリスクを減らすうえで有効といえよう.Ⅵ 睡眠睡眠時間と認知症発症の関連を検討したコホート研究はわずかに存在する.スペイン人の高齢男女を平均3.2年追跡したコホート研究では,9時間以上の過度の睡眠は認知症,特にAD発症の有意な危険因子だった9).また,米国の高齢女性を13年間追跡したコホート研究の成績によると,7時間睡眠の群と比べ,8時間以上の睡眠群,および6時間以下の睡眠群における軽度認知障害+認知症の発症リスクは有意に高かった10).さらに,スウェーデンのコホート研究が中年期の睡眠障害と老年期の認知症発症を検討しており,中年期の睡眠障害(自己申告)はAD発症の有意な危険因子だった(ハザード比:1.5)11).一方,日系米国人を3年間追跡して老年期の昼寝と認知症発症の関係を検討したコホート研究では,昼寝をしない群と比べて過度の昼寝をする群の認知症の発症リスクは2.2倍有意に高かった12).老年期の過度の睡眠や昼寝と認知症発症の関係を検討した研究はいずれも追跡期間が約3年と比較的短いため,認知症発症前,または早期認知症との関連を示している可能性がある.一方,ヒトを対象とした臨床研究や動物実験において,睡眠時間だけでなく,睡眠の質の障害が脳内のアミロイドβ蓄積と密接に関連することが明らかになりつつある13).30分未満の昼寝はAD発症の防御因子であると報告するわが国の後向きコホート研究もあるため14),今後は認知症,特にADの予防に有効な睡眠時間や睡眠の質を明らかにすることが必要である.1.21.00.80.60.40.20.01.00(基準) 1.020.73 0.69(n)(270)Q1(少)(270)Q2(270)Q4(多)(271)Q3ハザード比血管性認知症アルツハイマー病牛乳・乳製品摂取量†p<0.05 vs. Q1† 傾向性p<0.05* 1.21.00.80.60.40.20.01.00(基準)0.640.560.63(n)(270)Q1(少)(270)Q2(270)Q4(多)(271)Q3牛乳・乳製品摂取量*†*図5牛乳・乳製品の摂取量別にみた病型別認知症発症のハザード比久山町男女1,081人,60歳以上,1988-2005年,多変量調整.調整因子:年齢,性,学歴,糖尿病,高血圧,総コレステロール,脳卒中既往歴,BMI,喫煙,飲酒,運動,食事性因子(エネルギー,緑黄色野菜,淡色野菜,果物・果物ジュース,魚,肉の摂取量).〔参考文献8)より引用改変〕