カレントテラピー 34-5 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.5 7417放射線治療― 最近の動向と展望―企画北海道大学大学院医学研究科放射線医学分野教授白?博樹放射線治療は,高エネルギーの放射線を用いる治療法であり,主にがん治療に使われ,時に良性疾患にも使われる.がん治療においては,放射線治療単独あるいは化学療法との併用(化学放射線治療)にてがんを根本的に治癒するために使われる.その他,手術前の腫瘍縮小や,手術後に残った部分への治療に使われる.結果として,がんが治癒した症例の40%には,放射線治療がその一部として含まれている.また,がんの進行期において,痛みや神経症状を軽減するためにも非常に有効である.放射線治療には,体の外から与えられる体外照射と,内部から与えられる体内照射がある.体外照射では主にX線が使われ,一部の疾患では,陽子線治療,重粒子線治療が保険適応となっている.通常,体外照射は,数日から数週間にわたる一連の治療で行われる.内部照射では,小さな放射線源を一時的に体内の腫瘍近傍に入れたり(小線源治療),液体にして飲んだり注射したりする.小線源を刺入する場合には痛みを伴うが,体外・体内照射とも,放射線そのものには痛みはない.高エネルギー放射線は,深部のがん細胞を破損し,死滅させる.周囲の正常細胞は一時的に障害を受けるが,多くの場合損傷から回復し,正常に機能し続ける.この一時的な損傷は照射部位により,一時的な日焼けのような皮膚の痛み,疲労,脱毛(脳腫瘍の場合),咽頭炎(咽頭照射の場合),下痢(腹部照射の場合)等が起きる.まれではあるが,3カ月以降に,大量の線量が照射された部位に間質性肺炎(胸部照射),消化管潰瘍(腹部照射)等が起きるリスクがある.とはいえ,最新の放射線治療は手術に比べて侵襲性が低い場合が多く,高齢者にも安全に利用されている.本特集では,「放射線治療の最近の動向」として粒子線治療と部位別のトピック,「放射線治療研究の最前線」として画像誘導の陽子線治療とスポットスキャン式の重粒子線治療,「放射線治療と他治療との併用」として放射線治療と化学治療・分子標的薬との併用,「医療技術解説」として最新の動体追跡放射線治療,「Key words」として日常診療で重要性を増しているいくつかの話題を挙げ,それぞれ,日本を代表する放射線治療医や医学物理士に執筆をお願いした.また,座談会にて,新進気鋭の放射線治療医に現在の放射線治療を概観していただいた.本書は現状の放射線治療に関しては,かなり網羅されており,明日からの診療にすぐにでも役立つものと確信している.本書を手に取った方を通して,ひとりでも多くのがん患者の方が,優れた放射線治療の恩恵を受けられることを期待している.エディトリアル