カレントテラピー 34-6 サンプル

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88 Current Therapy 2016 Vol.34 No.6598糖尿病腎症の食品交換表 第3版刊行にあたって虎の門病院内分泌代謝科部長 森 保道糖尿病腎症による透析導入症例の増加を背景に,1998年に『糖尿病性腎症の食品交換表』(以下,腎症食品交換表)第1版が作成された.たんぱく質量の制限が可能となるように,表1と表3を1単位あたりのたんぱく質含有量に応じて3~4区分に細分化し,細区分のなかで食品を交換することにより,総エネルギー制限(指示単位数)とたんぱく量制限(指示たんぱく量)の両立を目指したものである.1965年に初版が刊行されて以来,わが国での糖尿病食事療法のスタンダードである『糖尿病食事療法のための食品交換表』(以下,食品交換表)で確立された食品交換のメソッドを継承しつつ,腎臓への負担を軽減するためのたんぱく質摂取量の制限,血圧コントロールのための食塩量の制限,電解質・ミネラルバランスを保つためのカリウム,リンの制限を上手に組み合わせ,腎機能悪化を遅延させ腎不全への移行を阻止することが本書の主眼である.食品交換表の計算の基盤となる日本食品標準成分表は2000年に五訂が出版され,その後食品交換表が2002年に第6版に改訂,それを受けて腎症食品交換表も2003年に第2版に改められ今日に至っている.2013年には炭水化物の適正な摂取量に対する指針を含む「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言」がなされ,同年10月に食品交換表が第7版に改訂されたことを受け,その関連書である腎症食品交換表も13年ぶりの改訂作業が進められ,2016年6月に第3版が刊行される.今回の改訂に求められた最重要課題は2014年の腎症病期分類変更に準拠する対応である.新分類では進行腎症期(第3期)は従来の3A期と3B期の分類がなくなり,顕性アルブミン尿を呈しeGFR 30mL/分/1.73m2以上に相当するより広範な定義となった.糖尿病治療ガイドが定める糖尿病腎症第3期の食事療法は,総エネルギーを標準体重1kgあたり25~30kcalとし,たんぱく質摂取量を標準体重1kgあたり0.8~1.0gに制限するものである.したがって本書では総エネルギー量一日18~25単位で,それぞれたんぱく質制限を標準体重あたり0.8g, 0.9g,1.0gの3段階とした指示単位配分例を提示することとした.6つの食品グループ(6つの表)の栄養素の平均含有量は,食品交換表第7版と同様に近年10年間の国民健康・栄養調査から得た食品の摂取頻度を勘案し算出した値に改め,また2015年12月に刊行された『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』にも対応した.今日では糖尿病患者の高齢化が進み,腎症食品交換表にも見やすさ,わかりやすさが何よりも求められている.この点を鑑み,糖尿病腎症のレビューを巻頭部に追加したほか,たんぱく質制限が始まった際の単位配分の変化を図示化して理解が進むようなさまざまな工夫を行っている.本書が腎症の治療にあたる医師,管理栄養士に活用され,腎症の進展阻止・透析導入減少の一助となれば改訂に携わった一員として望外の喜びである.糖尿病治療における食事療法の課題と展望─新たなエビデンスに基づいた食事療法