カレントテラピー 34-6 サンプル

カレントテラピー 34-6 サンプル page 8/30

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 34-6 サンプル の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 34-6 サンプル

Current Therapy 2016 Vol.34 No.6 11糖尿病の食事療法を巡る課題と展望521を考慮したうえで,性,年齢区分,身体活動レベル別に「推定エネルギー必要量」が定められている.ところが,「栄養業務の現場ではエネルギー必要量の測定や推定はきわめてむずかしく,それを試みるのは実践的ではない」と説明されている.もう少し具体的には,①エネルギー必要量は個人差が大きいために推定エネルギー必要量を個人に適用するには注意を要する,②食事アセスメントで算出されるエネルギー摂取量は主に過小申告と日間変動のために精度が低い,③性・年齢・身体活動レベルなどからエネルギー必要量を推定する式も推定誤差のために使いにくい,と指摘している.特に,食事アセスメントにおけるエネルギー摂取量の過小申告に関する部分は熟読に値する.肥満のない成人(body massindex:BMIが23程度)でも15%程度過小に申告されるとしている.2,000 kcal/日摂取している場合,1,700 kcal/日と申告されることになる.食事指導・食事管理上,無視できない差である.肥満者はさらに過小に申告することも知られている.そのため,推定エネルギー必要量は,参考表として扱われており,栄養素における推奨量や目標量が食事摂取基準として扱われているのに比べて,低い扱いとなっている.そして,エネルギー管理には,推定エネルギー必要量(ならびに他の方法で推定したエネルギー必要量)ではなく,体重の変化を用いるほうがよいと書かれている.これは注目に値する.ところで,そもそもどのくらいの体格(BMI)がよいかが問題となる.BMIと総死亡率との関連を調べた疫学研究を参考にして,目標とするBMIの範囲が年齢階級別に定められている(表2).望ましいBMIが「点」ではなく,「範囲」で定められていることに注目したい.これは特定の疾患を念頭に置いたものではないが,糖尿病の管理においても参考になるだろう.Ⅳ 各論②─栄養素─33種類の栄養素について摂取すべき値が示され,その理由が説明されている.栄養素は,エネルギーを産生する栄養素(エネルギー産生栄養素)と産生しない栄養素(ビタミンとミネラル)に大別される.前者は,たんぱく質,脂質,炭水化物ならびにアルコールが含まれ,後者には,ビタミン類とミネラル類が含まれる.食物繊維とコレステロールはエネルギーをほとんど産生しないが,分類上,前者で述べられている.1 エネルギー産生栄養素エネルギー産生栄養素は,たんぱく質,脂質,飽和脂肪酸,炭水化物(アルコールを含む)について,その摂取量の範囲が目標量として与えられ,エネルギー産生栄養素バランスと呼ばれている.単位は総エネルギー摂取量に占める割合(%エネルギー)である(表3).注目したいのは,「点」ではなく「範囲」で与えられていることである.ところで,たんぱく質は,目標量とは別に推定平均必要量と推奨量も設けられている.目標量が生活習慣病を念頭に置いているのに対して,こちらは,不足からの回避が目的である.不足する人がほぼ誰もいない(ほぼすべての人で充足する)摂取量が推奨量である.したがって,実際の診療では,推奨量以上かつ目標量の範囲にある摂取量をめざすことになる.総脂質だけでなく,飽和脂肪酸も含まれていることにも注意したい.動脈硬化性疾患の予防を念頭に置いたものである.なお,コレステロールは摂取すべき量が示されていない.「数値を示すことはむずかしいが,これは,摂取を勧めるものではない」とされている.炭水化物はその量だけでなく,質についても注意喚起がなされ,食物繊維の目標量が設けられている(表4).現在の日本人の摂取量分布からみればかなり多い.これは糖尿病の管理においても重要であろう.表2 観察疫学研究において報告された総死亡率が最も低かったBMI(kg/m2)の範囲と目標とするBMI(kg/m2)年齢(歳)観察疫学研究において報告された総死亡率が最も低かったBMIの範囲目標とするBMI18~49 18.5~24.9 18.5~24.950~69 20.0~24.9 20.0~24.970以上22.5~27.4 21.5~24.9