カレントテラピー 35-11 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.11 211031の効果に関する検討の暫定解析が報告されている2).耐糖能の糖尿病型あるいは正常型への移行,非移行例の場合は,最低3年観察してボグリボース投与の効果を検討したこの検討では,糖尿病型移行は6%と対照群の12%より40%有意に少なく,正常型への移行は67%と対照群の52%より54%有意に増加していた(図1).この報告を受け,わが国の保険診療では珍しいことになるが,IGT診断後に3~6カ月間食事・運動療法を行っても改善がなく,かつ高血圧症・脂質異常症・肥満(BMI 25kg/m2以上),2親等以内の糖尿病家族歴のいずれかを有することを条件にボグリボース0.6mg/日の投与が2009年から可能になっている.保険適用上,耐糖能が正常型へ復した段階でその投与は中止されることになるがSTOP -NIDDM研究ではアカルボース投与中止後わずか3カ月で糖尿病移行が増加したともされており,臨床上どのように観察を続けるのがよいのかは今後の課題である.Ⅲ インスリン抵抗状態・食後高血糖の改善と心血管障害への抑制効果α- GIによる食後インスリン分泌の低下には同時にインスリン作用改善が伴われることが古くから知られている3).非糖尿病例を対象とし,血糖低下作用とは独立したインスリン作用への効果を明らかとしたこの報告では,さらにトリグリセリド(triglyceride:TG)の低下,HDL-CおよびApoA1の上昇と,α- GI中止によりほぼ原状へ復することが示され,血糖降下薬としてだけでなくα- GIの中性脂肪への効果も示されている.さらに,食後高血糖例への投与の際は,その改善により,酸化ストレス・白血球粘着・過凝固・NF -κBの活性化と核内移行の抑制,eNOS放出・内皮依存性血管拡張の回復が報告されており,これらを介した心血管障害発症への抑制効果が期待される.事実,STOP -NIDDM研究からIGT例を対象にアカルボース300mg/日投与の心疾患,高血圧,頸部頸動脈内膜中膜複合体肥厚(intima-media thickness:IMT)への抑制効果が次々に報告された(図2).なお,食後高血糖改善というα-GIの効果の評価に国際糖尿病連合(international diabetes federation:IDF)が持続血糖測定(continuous glucose monitoring:CGM)と並べて推奨している1,5-anhidro -D -glucitol(1,5-AG)はアカルボース使用例では低下してしまい役に立たないことが知られている4).尿中の1,5-AGも低下していることからα -GIのうちアカルボースだけが腸管吸収へ何らかの影響を及ぼすものと想像されている5).Ⅳ 併用療法についてα- GIの腸管での糖質吸収阻害作用はインスリンの作用を介さないものでありすべての糖尿病例に対し,効果を期待し得るものである.このため古くから強化インスリン療法へのα- GI追加の意義については検討されてきたが,より食後血糖の制御に優れる超速効型インスリンを使用中の1型糖尿病例への追加意義も報告され,glucagon-like peptide- 1(GLP- 1)上昇とglucose -dependent insulinotropic polypeptide(GIP),体重の減少が指摘されている6),7).α- GIのGLP - 1 上昇作用は長時間持続し8),9),したがってDPP - 4阻害薬併用による血中レベルの保持には血糖と体重への効果がより期待されるところであるが,Mikadaらは肥満2型糖尿病例を対象にミグリトールの血糖,GLP - 1,そしてさらに内臓脂肪量への効果がシタグリプチンの併用で増強されたと報告している10).なおα-GI内服による体重減少の機序としProgression to diabetes(%)Number at risk72 96 120 144Time(weeks)146180356385736765897881ボグリボースプラセボボグリボースプラセボ80120497329331008060402000 24 48図1 糖尿病型移行抑制へのボグリボース投与の効果