カレントテラピー 35-11 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.11 71治療薬解説1081しにくく,体重増加がないことが知られ,その他,臨床の現場で重篤な副作用の報告が少ないことから,高齢者にも使用しやすいとされている.DPP - 4阻害薬の心血管イベントに対するエビデンスとしては,FDAガイダンスに則って行われ,2013年に発表されたSAVOR-TIMI 536), EXAMINE7), 2015年に発表されたTECOS8)がある.SAVOR-TIMI 53は,16,492名のCVDの既往,もしくは複数の心血管リスクを有する2型糖尿病患者を対象として行われた.平均観察期間は2.1年で,主要エンドポイント(心血管死,心筋梗塞,虚血性脳卒中の複合)に関して,サキサグリプチンのプラセボに対する非劣性が示された(7.3% vs. 7.2%,HR 1.00,95%CI,0.89- 1.12,優越性p=0.99,非劣性p<0.001).一方で,心不全による入院がプラセボ群より増加(3.5% vs. 2.8%,HR 1.27,95%CI 1.07- 1.51,p=0.007)していた6).その後,SAVOR -TIMI 53の症例での事後解析が行われ,心不全による入院リスクの増加は投与開始12カ月後までに多くみられること,特にNT -proBNP 高値,心不全既往,慢性腎疾患(eGFR < 60 mL/ 分/ 1.73 m2)を合併した患者でハイリスクであることが示された9)が,現在のところ,本事象の理由は不明である.EXAMINEでは,対象は5,380名で,過去15~90日の間に急性冠症候群の既往のある2型糖尿病患者を対象とし,アログリプチン群とプラセボ群に無作為に割り付けられている.平均18カ月の観察の結果,本薬剤は主要エンドポイント(心血管死,心筋梗塞,虚血性脳卒中の複合)の発生率を増加させず,非劣性が示された(11.3% vs. 11.8%,HR 0.96,片側検定CI上限1.16,非劣性p<0.001,優越性p=0.32)7).対象者には心不全の患者が28%含まれていたが,プラセボ群の3.3%に対し,アログリプチン群では3.9%の心不全入院があったことが判明し,同研究グループは,EXAMINEの症例を用いてアログリプチンによる心不全入院の増加が認められるか否かの事後解析を行っている.その結果,アログリプチンにおいてプラセボに比し,心不全入院の有意な増加を示すデータは得られなかった(16.0% vs. 16.5%,HR 1.00,95%CI 0.82-1.21)10).次に施行されたTECOSにおいても同様な結果であったことから,SAVOR-TIMI 53でのサキサグリプチンによる心不全入院の増加は,DPP - 4阻害薬のクラス効果ではないものと考えられている.TECOSでは,対象者が14,671名の心血管イベントハイリスクの2型糖尿病患者,平均観察期間は3.0年とされ,シタグリプチンの主要エンドポイント(心血管死,心筋梗塞,虚血性脳卒中,不安定狭心症による入院の複合)に対する非劣性が示された(9.6% vs.9.6%,HR 0.98,95%CI 0.88- 1.09,p<0.001).さらに,心不全による入院,CVDによる死亡も統計学的有意差は認めなかった8).有害事象については,当初懸念された膵炎,膵癌のリスクは多くの観察研究の結果では有意ではないとされている11),12)が,本研究結果でも治療薬群とプラセボ群に有意差はみられていない.一方で,2015年にFDA医薬品安全性情報より関節痛の警告が出され,2016年にはサキサグリプチンとアログリプチンに新たに心不全に関する警告も追加されている.また,本邦では,アログリプチン,テネリグリプチン,リナグリプチンに対して2016年に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)より重大な副作用に類天疱瘡の追記の改訂がなされているなど,有害事象の可能性について明らかとなっていない点も残っている.Ⅲ GLP-1受容体作動薬GLP - 1受容体作動薬は血糖依存性の血糖改善効果を発揮する薬剤で,現在本邦で使用可能な5剤はいずれも注射薬であり簡便性では内服薬であるDPP - 4阻害薬に及ばないものの,体重減少効果が期待できる利点がある.GLP - 1受容体作動薬の心血管イベントに対するエビデンスとしては,2015年にELIXA,2016年にLEADER,およびSUSTAIN- 6が発表されている.ELIXAは,180日以内に心筋梗塞あるいは不安定狭心症で入院歴のある2型糖尿病患者6,068名を対象とし,リキセナチド群のプラセボ群に対する心血管イベント発症における非劣性を検討している.主要エンドポイントは心血管死と心筋梗塞,脳卒中,不安定狭心症による入院の複合とされ,観察期間は中央