カレントテラピー 35-11 サンプル

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76 Current Therapy 2017 Vol.35 No.111086グルカゴン大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学 桂 央士大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学助教 河盛 段膵α細胞より分泌されるグルカゴンは,肝糖放出促進および糖新生亢進・脂肪組織における脂質分解・肝アミノ酸代謝促進といった生体におけるエネルギー異化・放出作用を有し,その過程として血糖上昇作用を呈する.すなわち,各臓器で糖取り込みを促進するなどエネルギー同化・貯蔵に働くインスリンとともに,グルカゴンは全身のエネルギーおよび血糖恒常性維持において重要な位置を占める.そして,糖尿病においてグルカゴン分泌過剰が慢性高血糖の主要因として,一方で反応不全が低血糖遷延の一因として,それぞれ病態的重要性が注目されている.生理的なグルカゴン分泌は高血糖時に抑制される一方,低血糖時に反応性に亢進することが知られているが,その調節系として栄養素・神経系・内分泌系,そしてインスリンなどによる膵島内局所作用などが報告されている.一方,糖尿病におけるグルカゴンの高血糖時分泌過剰と低血糖時反応不全の発症メカニズムはいまだ明らかとなっていない.そのなかでわれわれは,高グルコースそのものがα細胞に直接作用し,インスリンシグナル障害を介してグルカゴン分泌過剰を誘導することを最近見出し,糖尿病との関連が示唆される.このように糖尿病の慢性高血糖を惹起するグルカゴン分泌過剰に対し,それを標的とした治療が試みられている.インクレチン関連薬はインスリン分泌促進のみならずグルカゴン分泌抑制作用を有し,その治療効果における寄与度も大きいことが知られている.グルカゴン受容体アゴニストは確かな血糖改善作用を呈したが,副作用によりその開発が現在中断している.一方,メトホルミンは肝臓でグルカゴンに拮抗し,糖新生を抑制することが報告された.SU薬・グリニド薬はグルカゴン分泌を刺激することが知られている.一方,これまでグルカゴン濃度測定に臨床的に用いられてきたRIA法において,その不正確性が指摘されている.最近になり,他物質との交叉性の少ないサンドイッチELISA法での測定が可能となったが,今後は血中グルカゴン動態などにおいてこれまでとは全く異なった結果や知見が得られる可能性もあり,注意が必要である.これまで糖尿病学においてはインスリン分泌や感受性のみが重要視されてきたが,これからは高血糖増悪の主要因としてのグルカゴンの理解を深め,これを意識した病態理解,そして診療を行うことがさらなる進歩につながると期待される.多彩な糖尿病治療薬をどのように使い分ける?