カレントテラピー 35-11 サンプル

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8 Current Therapy 2017 Vol.35 No.111018Ⅰ はじめに1型糖尿病は,膵β細胞の破壊により高度なインスリン分泌障害をきたす糖尿病であり,通常はインスリン依存状態を呈する.1型糖尿病におけるインスリン療法の原則は,可能な限り正常のインスリン分泌パターンをインスリン製剤によって再現・構築することであり,一般的にインスリン頻回注射療法が行われる.これにインスリン効果値に基づく血糖補正やカーボカウントを組み合わせた治療法を強化インスリン療法といい,1型糖尿病のインスリン療法の基本となっている.近年では,超速効型インスリンや持効型インスリンといったインスリンアナログ製剤の登場によって,頻回の注射であっても患者の生活の質(QOL)は著しく向上し,以前に比べて比較的安全かつ厳格な血糖コントロールが可能となった.また,持続グルコースモニタリング(continuous glucose monitoring:CGM)システムやフラッシュグルコースモニタリング(flash glucose monitoring:FGM)システムが登場し,血糖変動を詳細に把握しながらリアルタイムに血糖補正を行うことも可能となった.本稿では,このような最先端のデバイスによって正確性や安全性の面でより進化した強化インスリン療法について,自験例を交えてまとめてみたい.Ⅱ インスリン頻回注射療法とは生理的なインスリン分泌は,24時間にわたって持続的に分泌されている基礎分泌と,食後の血糖上昇に反応してタイミングよく分泌される追加分泌から構成される(図1).1型糖尿病では,この生理的インスリン分泌パターンを忠実に再現し構築することを目的として,基礎ならびに追加インスリンの補充が行われる.通常,基礎インスリンとして持効型インスリン*1 埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科講師*2 埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科教授多彩な糖尿病治療薬をどのように使い分ける?1型糖尿病のインスリン頻回注射療法─新しい進歩は?─及川洋一*1・島田 朗*21型糖尿病では,一般的にインスリン頻回注射療法(あるいは持続皮下インスリン注入療法)にインスリン効果値に基づく血糖補正やカーボカウントを組み合わせた“強化インスリン療法”が行われる.この概念は今も昔も変わっていないが,インスリンアナログ製剤ならびに自己血糖測定器の開発・普及は,強化インスリン療法を実践していくうえで大きな後押しとなった.最近では,持続糖モニタリングシステムやフラッシュグルコースモニタリングシステムの登場によって,基礎インスリンの正確な評価に加えて食後血糖の推移や低血糖の状況などもリアルタイムで把握できるようになり,より安全かつ厳格な血糖コントロールが可能となった.このような新しいデバイスを兼ね備えた強化インスリン療法は,近年,より理想的なものに進化したといえるだろう.