カレントテラピー 35-12 サンプル

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80 Current Therapy 2017 Vol.35 No.121186Ⅱ 上肢麻痺回復の予後脳卒中発症後,歩行や日常生活が自立に至る割合は60%とされるのに対し,上肢が実用レベルまで回復するのは15~20%にとどまるとされ1),上肢麻痺の回復の予後は必ずしもよくない.Nakayamaら2)は,初発脳卒中患者421名を対象に,麻痺側上肢機能をScandinavian Stroke ScaleとBarthel Indexの食事,整容項目を用いて,発症後から1週間ごとに評価し,その回復過程を検討した.その結果,①回復は主に最初の2カ月間に起こる,②完全回復は,軽度麻痺例では79%に,重度麻痺例では18%にみられる,③軽度麻痺例では3週時に80%が,6週時に95%が回復のプラトーに達することから,3週の時点で妥当性のある予後予測が可能であり,6週目以降にはさらなる回復は期待できない,④重度麻痺例では,3週時に80%が,6週時に95%が回復のプラトーに達し,6週の時点で妥当性のある予後予測が可能であり,11週目以降には,さらなる回復は期待できない,ことを報告した.Smaniaら3)は,発症7日目に随意的な手指伸展がみられるかどうかは,14日後,30日後,90日後および180日後の上肢機能回復の強力な予測因子であるとしている.Nijlandら4)は,発症後2日の時点で,少しでも随意的な手指伸展と麻痺側肩関節の外転が出現すれば,6カ月の時点で98%の確率である程度の巧緻性がみられるが,随意性がまったくみられなければ,回復の確率は25%にとどまるとしている.さらに,発症後72時間以内に随意的な手指伸展がみられれば,6カ月時点に60%の患者で,Action Research ArmTest(ARAT)を用いて評価した上肢機能は,完全回復を示すとしている.亜急性期の症例に関して,Houwinkら5)は,リハ入院時(発症後32.2±12.2日)にわずかでも随意的な肩関節外転と麻痺側上肢のコントロールがみられれば,ある程度の手指機能が回復するが,上肢近位のコントロールがまったくみられなければ,手指機能の回復は困難としている.以上の回復の予後に関する情報を踏まえ,上肢麻痺に対するリハ治療介入を計画する必要がある.Ⅲ 上肢麻痺に対する治療介入前述のように,これまでは軽度麻痺例を除き,上肢麻痺が実用レベルまで回復することは困難と考えられていたため,治療の主体は,麻痺自体の回復を指向したリハより,利手交換,片手動作習得などの代償的リハが中心であった.一方,近年の神経科学研究の知見は,傷害された成熟脳にも大きな可塑性があることを示しており6),麻痺自体の回復を促すためのさまざまなリハ治療手技が注目されている.Langhorneら7)によるメタアナリシスでは,麻痺のない上肢を抑制して麻痺手の使用を促すconstraint-induced movementtherapy(CI療法),筋電バイオフィードバック,電気刺激,運動イメージ,ロボット療法による上肢機能の改善が示されているが,手指機能については有効性が確認された治療法はない.表1に,最近の主な脳卒中関連のガイドラインにおける上肢麻痺に対する介入の推奨レベル(もしくはエビデンスレベル)を示す8)~10).上述のメタアナリシスとほぼ同様に,課題特異的訓練,CI療法,ロボット療法,神経筋電気刺激,運動イメージ,仮想現実などが科学的根拠をもって有効性が示されている治療法として位置づけられていることがわかる.ただし,手指の随意伸展がみられない重度の片麻痺例は,従来の治療法の適応外となり,麻痺手の回復をもたらす新たなリハ手法の開発が求められている.われわれはここに研究開発のターゲットがあると考え,BMIを用いた新たなリハ手技の開発に取り組んできた.以下,その概要を紹介する.Ⅳ 基礎となった技術非侵襲BMIは頭皮脳波を周波数ごとに分離して信号強度を定量し,機械学習でパターン分類を行うことで,リアルタイムに運動企図を解読する技術である.脳情報の解読結果に応じ,家電やパソコンを操作する家電制御型BMIは,2008年頃から世界的に研究が進められるようになった.