カレントテラピー 35-12 サンプル

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概要:
カレントテラピー 35-12 サンプル

Current Therapy 2017 Vol.35 No.12 81代替療法1187文部科学省脳科学研究戦略推進プログラム「課題A」(2008~2012年)のなかでわれわれは,独自開発した運動イメージ関連脳活動を高精度に解読可能な頭皮脳波BMIシステムを用いて,重度筋ジストロフィー患者の頭皮脳波をリアルタイムに分析し,セカンドライフTR内のアバターの操作を可能にするBMIを開発した11).このBMIを半年間,継続使用したところ,30年近く麻痺があったにもかかわらず,BMI操作のための脳波反応が顕在化した.すなわち成人病態脳であっても,脳信号を直接利用するBMIにより,脳の活動状態に変化をもたらし得ることが示唆された.この知見を基にBMIの脳可塑性誘導への応用を着想し,世界に先駆け,重度手指麻痺の回復をもたらす脳波BMIリハシステムを開発した.本システムでは,麻痺側手指伸展企図時の運動野近傍の脳波変化(事象関連脱同期:event-related desynchronization:ERD)を頭皮電極で記録し,解析結果を視覚的にフィードバックするとともに,運動企図したと判断された際には,麻痺側手指を電動装具で伸展することにより体性感覚フィードバックを脳に返し,脳可塑性を誘導することを治療原理としている(図1)12).Ⅴ 神経生理学的機序BMIリハの機序および神経生理学的意義について,これまで以下の知見が得られている.電気生理学的手法により,体性感覚運動野近傍から誘導される8~13Hzを主成分とする周期的信号(μ律動)は,大脳皮質内抑制と脊髄前角細胞の興奮性の変化を反映し,手指の随意運動の生成上,重要な機能バイオマーカーであることを確認した13),14).さらに,脳イメージング研究においても,ERDを指標に障害半球運動野の興奮性を随意調節するBMIリハ施行後には,同部の興奮性が誘導されることを確認した15).Ⅵ BMIリハに関する臨床研究脳卒中後の重度手指麻痺に対するBMIリハ治療の開発と実用化に向けて,以下の臨床研究を行ってきた.まず,パイロット研究として,脳卒中重度手指麻痺患者8名において,手指伸展企図に伴うERDをトリガーに,手指伸展を電動装具で再現する脳波BMIリハシステムによる介入を行ったところ,運動機能と日常における麻痺手の使用頻度が改善した12).ERDにトリガーさせる条件とトリガーせずに伸展させる条件との比較では,トリガー条件でのみ上肢機能が改善し,機能的核磁気共鳴画像法(functional magnetic resonanceimaging:fMRI)では麻痺側手指の運動企図時に障害側運動野の賦活と他部位の抑制を認めた16).以上から,BMIリハにより重度片麻痺患者でも機介入AHA/ASA 日本脳卒中学会Canadian Partnership課題特異的訓練Ⅰ B[1- 2] 1 b- 2ADL訓練Ⅰ NA 1 b(更衣)IADL訓練Ⅰ NA NACI 療法Ⅱ a A 1 a- 2ロボット療法Ⅱ a B 1 a神経筋電気刺激(NMES) Ⅱ a B 1 a- 2運動イメージⅡ a NA 1 a- 2筋力増強訓練Ⅱ a NA 1 a- 2仮想現実Ⅱ a NA 1 a体性感覚再訓練Ⅱ b NA 1 a- 2両側上肢訓練Ⅱ b B 1 a- 2ミラー療法NA B 1 a経頭蓋磁気刺激(rTMS),経頭蓋直流電気刺激(tDCS)NA C 1 1 a- 2鍼治療Ⅲ NA 1 a- 2表1主なガイドラインにおける上肢麻痺へのリハ介入の位置づけAHA/ASA:ClassⅠ:益>>>リスク;ClassⅡa:益>>リスク;ClassⅡb:益≧リスク;ClassⅢ:益なし,もしくは有害日本脳卒中学会:A:強く推奨,B:推奨,C 1:行ってもよいが,科学的根拠なしCanadian Partnershipエビデンスレベル:1 a:1 つ以上の質の高いRCT;1 b:1 つの質の高いRCT;2:質の低いRCT,CCT,コホート研究〔参考文献8)~10)を参考に作成〕