カレントテラピー 35-12 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.12 83代替療法1189また,BMIリハ自体が運動イメージ中の脳波変化を用いるため,てんかんの既往,抗てんかん薬服用の有無を確認する.さらに,皮質興奮性を修飾する経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:TMS)や経頭蓋直流電気刺激(transcranial directcurrent stimulation:tDCS)をBMIに併用する場合には,てんかん関連の情報に加え,除外基準となるシャント術・クリッピング術後など体内異物の存在,ペースメーカーの有無を確認する必要がある.2 診察と適応判断診察では,上肢麻痺に対する各種介入の適応判断に必要な情報を得るために,運動麻痺,感覚障害,筋緊張,拘縮,上肢実用度,activities of daily living(ADL),認知機能などを評価する.図2に脳卒中後上肢麻痺に対する治療戦略を示すが,手指の分離運動が少しでも可能であれば,通常のリハもしくはCI療法の適応となる.分離運動が不能であれば,手指伸展企図時の手指伸筋の筋電をチェックし,筋電が導出可能であれば手指伸筋を電気刺激でアシストしながら日常での使用を促すHANDS療法の適応となり,導出不能であればBMIリハの適応となる.てんかんなどの禁忌がなければ皮質興奮性を高め得るtDCSを併用することもある.完全麻痺の場合には最初にBMIリハを行い,手指伸筋の筋電が導出されるようになればHANDS療法へと移行する.これにより日常生活での使用が促され,さらなる改善が期待できる.また,痙縮がリハの阻害因子となっていれば,ボツリヌス毒素療法も考慮する.3 BMIリハの進めかたBMIリハはまだ研究段階であり,倫理承認を得て,厳密な適応判断の下に行われる(表2).適格性の基準を満たす場合には,文書による同意後,10日間の入院による1日1時間のBMIリハ訓練を集中的に行う.訓練では,パソコン画面の指示に従い,5秒ごとに「手指伸展の運動イメージ」と「安静」を反復し,イメージに伴って適切な脳波変化がみられた場合には,麻痺側手指に装着した電動装具が駆動され,手指が他動的に伸展される.これを1セッションあたり50~100回繰り返し,脳の可塑的変化を促す.さらに,作業療法および病棟生活において,回復状況に応じて麻痺手を用いる動作課題を難易度別に設定し,段階的に日常場面での使用を促す.患者自身にも課題の設定に積極的に関与させ,また,進歩の状況をタイムリーにフィードバックすることによって訓練意欲を高めながら,訓練が円滑に進むように工夫する.退院前には,退院後の生活に即したホームプログラムを指導し,継続的な麻痺手の使用を習慣づける.Ⅷ 新たな展開手指BMIを用いた治療により,約70%の症例で手指伸筋の筋活動の出現が新たに得られ,上肢近位の障害が軽度~中等度の症例であれば,HANDS療法へと移行することにより,日常生活で実用性のある機能を獲得する道が開かれた(図2).一方,上肢近位の障害が重度でリーチ運動が困難な症例に対しては,手指の分離運動● 通常のリハビリ● CI療法● 磁気刺激● 直流電流刺激手指伸筋の筋電(+)HANDS療法ロボット療法BMIリハ(+) (-)(-)軽度重度図2脳卒中後上肢麻痺に対する治療戦略手指の分離運動が多少でも可能であれば,通常のリハもしくはCI療法の対象となる.分離運動が不能であれば,手指伸展企図時の手指伸筋の筋電を確認し,筋電が導出可能であればHANDS療法の適応となり,導出不能であればBMIリハもしくはロボット療法を考慮する.