カレントテラピー 35-12 サンプル

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88 Current Therapy 2017 Vol.35 No.121194較して5年目での脳梗塞発症率は46%低下した6).脳卒中発症予防に有効な目標とすべき総コレステロール値あるいはLDLコレステロール値に関しては,現在明らかな結果は得られていない.CTT Collaborationによるメタ解析の結果によると,主要血管イベント(冠動脈疾患,冠動脈血行再建,脳卒中)の発症を抑制するためには,治療開始時のLDLコレステロール値に関わらず〔LDLコレステロール77.2mg/dL(2mmol/L)未満においても〕,スタチンによりLDLコレステロールを38.6mg/dL(1mmol/L)低下させることにより20%程度のイベント抑制効果が期待できる(図3)4).また,脂質低下療法による脳卒中の抑制効果は治療によるLDLコレステロール低下率と逆相関することが示されている7).この結果から“Thelower the LDL-cholesterol,the greater the riskreduction for stroke”と考えられる.一方で,スタチンによる脳卒中予防効果は,MEGA Studyのサブ解析においてLDLコレステロール値が119.7mg/dL以下では観察されなかった8).以上の結果より,至適治療域については今後のさらなる検証が必要である.Ⅳ スタチンと脳卒中再発予防脳卒中の再発予防に関して,LDLコレステロールを70mg/dL程度まで下げる強力なスタチン治療が,脳卒中既往患者での再発予防にも効果があるかを検証したStroke Prevention by Aggressive Reductionin Cholesterol Levels(SPARCL)試験では,冠動脈疾患の既往のない脳卒中または一過性脳虚血発作患者(発症後1~6カ月以内)4,731例を対象に,アトルバスタチン(80mg/日)とプラセボ群で約5年間の観察期間において致死的・非致死的脳卒中の発症を主要エンドポイントで比較した9).その結果,アトルバスタチン群でLDLコレステロール値は72.9mg/dLにコントロールされており,主要エンドポイントの致死的・非致死的脳卒中の発症はプラセボ群に比べて16%の有意な相対リスク低下が認められ,その有効性が示された.これまでの欧米における脳卒中の予防に関する臨床試験では,スタチンの投与量がわが国の常用量よりもはるかに多く,また欧米人と日本人とでは冠動脈疾患や脳卒中の発症率あるいは生活習慣が異なり,さらに欧米人に比べて日本人は脳出血が多いことから,欧米人で得られた結果はそのまま日本人に適用できない可能性がある.これらの背景から,日本人におけるスタチンの脳卒中再発予防におけるエビデンスを確立するために,多施設共同無作為化比較試験(RCT)「脳血管疾患の再発に対する高脂血症治療薬HMG -CoA還元酵素阻害薬の予防効果に関する研究(JapanStatin Treatment Against Recurrent Stroke:JSTARS」を行った10).または信頼区分99%95%脳梗塞脳出血不詳脳卒中全脳卒中987(0.4%)188(0.1%)555(0.2%)1,730(0.7%)1,225(0.5%)163(0.1%)629(0.2%)2,017(0.8%)0.80(0.72-0.89)1.15(0.87-1.51)0.88(0.76-1.02)0.85(0.80-0.91)p<0.00010.80(0.73-0.88)1.10(0.86-1.42)0.88(0.76-1.02)0.85(0.80-0.90)p<0.0001コントロールイベント(%/年)スタチンスタチンコントロールLDL-C 38.6mg/dL(1mmol/L)低減による相対危険度(信頼区分)0.5 0.75 1 1.25 1.5スタチンコントロール0.5 0.75 1 1.25 1.5非加重相対危険度(信頼区分)スタチン vs. コントロール(21試験:LDLコレステロールの差41.3mg/dL)図2 スタチンによる脳卒中に及ぼす影響〔CTT Collaboration,参考文献4)より引用〕